服を買うとき、ECサイトではなかなか決断できず購入を先送りしていたのに、店舗に行ったらすんなり決まった……なんてこと、ありませんか?これは、選択肢の「量」に紐づいた心理学的効果が理由かもしれません。
今回は、マーケティングやセールスにおいて重要な考え方の一つである「決定回避の法則」についてご紹介します。
選択肢は多い方が良い……とは限らない
何かを購入しようとするとき、選択肢は多ければ多いほど良いはずだ、と考える方も少なくないでしょう。しかし、心理学的にはそうとも言い切れない実験結果が出ています。
それが、社会心理学者であるシーナ・アイエンガーが発表した「決定回避の法則」です。これは“人は選択肢が多すぎると決断を後回しにする”というもので、ジャムを使った市場実験で実証されたことから、「ジャムの法則」とも呼ばれています。
この実験では被験者を2つのグループに分け、それぞれスーパーマーケットでジャムの試食販売を実施。一方は6種類、もう一方は24種類のジャムを用意して、購入率を調べました。
その結果は下図のとおり。
なんと、ジャムの種類が4分の1であるグループAの方が購買率は高く、グループBとの差は10倍にもなったのです。この結果から、選択肢が多すぎるとそのすべてを吟味することができず、結果的に選択自体を保留にしてしまうという傾向があることが判明しました。
冒頭の服選びも同様です。ECサイトでは関連商品や閲覧履歴がたくさん表示されるが故に選択を避けてしまうのに対して、店舗での限られた選択肢なら比較検討しやすいため購入に至りやすくなります。
“買ってもらう”ためにできる見せ方の工夫
セールスやマーケティングにおいても、「決定回避の法則」が役立つ場面は多いのではないでしょうか。この法則を活用したアプローチの手法をいくつかご紹介します。
①ジャンル分けをする
商品の種類やエディションが多い場合は、シーンごとに細分化するのがお勧め。先ほどのジャムの例でいうと、「パンに塗るなら」「ヨーグルトにかけるなら」「クラッカーにつけるなら」などとジャンル分けすれば、顧客が選択肢を比較検討する手助けになります。
②基準となる商品をレコメンドする
総合通販サイトなどで商品を見るとき、そのジャンルのお薦め商品がトップに固定表示されているのを見たことはありませんか?これも、選択肢を絞り込みやすくするための施策の一つです。
③あえて選択肢を増やす
この法則を逆手にとり、リピート率向上を狙う手法もあります。例えばサブスクリプション型の契約の場合、「継続する」「解約する」の2択を顧客に迫るのではなく、新エディションの案内など選択肢を増やすことで、決断の先送りを促すことができます。
購入率アップを狙うなら選択肢の“数”にも意識を
今回は、顧客の意思決定に関わる心理効果「決定回避の法則」をご紹介しました。人はたくさん選択肢があると、選択すること自体を先送りしてしまうというものです。
一般的に、選択肢は多ければ多いほど良い=購入してもらえるはずと考えがちですが、それが選ぶ側の負担になってしまうことも。自社の商品やサービスを打ち出す際は「選択肢が多すぎて選ぶのが難しくなってしまっていないか」という点も意識してみると、購入率の向上につながるかもしれません。