データクレンジングとは? 取り組みやすい手法や進め方を解説
データクレンジングは、収集したデータを適切に分析するために必要なプロセスで、データの品質を保証する上で重要視されています。この記事では、データクレンジングの概要やメリット、手法や進め方についてご紹介します。データクレンジングに取り組んでみたいものの、どのように始めたらいいか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
データクレンジングとは
データクレンジングとは、CSV形式のファイルやデータベースに保存されたデータの重複や欠損、ノイズ、表記揺れなどを見つけ、分析や業務を適切に行うために加工するプロセスのことです。
データを表記する基準が不明確であったり、正式名称と通称が混ざっていたりすると、データを抽出した際に重複が発生する可能性があります。表記揺れには特に注意が必要で、例えば、会社名の英語表記やカタカナ表記、電話番号のハイフンの有無、住所における建物名の書き方、名前の旧字体と新字体など、1社の情報だけを見ても表記揺れの可能性がある箇所は多岐にわたります。また、データそのものは正しくてもデータ量が多すぎるなど、分析に使いづらい形で抽出される場合もあります。
データクレンジングはこのような問題を解決し、データの一貫性を保ちながら品質を向上させる役割があります。
データクレンジングと名寄せの関係性
データクレンジングと名寄せは密接に関連しており、ほぼ同時に行われる作業のため混同して表現されることがありますが、厳密には異なる作業です。
名寄せは、複数に分かれている同一のデータを一つに統合することを指します。もし、データに表記揺れなどが含まれている場合、ツールで名寄せを行うと同一データとは判断できず、複数のデータとして残ります。名寄せを正確に行うには、先にデータを整理することが不可欠で、データを整理するために用いられるのがデータクレンジングです。
あらかじめデータクレンジングで表記揺れなどのデータを修正し、ツールが同一内容と認識しやすい状態に整理することで、名寄せにおけるデータの統合などが容易に行えるようになります。
データクレンジングが重視される理由
収集した1次データの品質を確認せずに活用、分析するのは正確性を欠きさまざまなリスクがあるため、データクレンジングでデータを整理する必要があります。
例えば、ユーザーアンケートなどで集めたデータは、ユーザーが意図的に偽った回答をしたり、回答内容をPCなどに入力する際に発生する人為的ミスが含まれる可能性があるため、常にデータの正確性を担保できる仕組みづくりが重要です。
データクレンジングで正確なデータに整えることで、ビジネス上の意思決定においても信頼性の高いデータに基づいた判断が可能になります。
データクレンジングのメリット
データクレンジングを行うことで、どのようなメリットがあるのかをご紹介します。
データの品質や分析の精度を高められる
データの正確性だけでなく、データの形式を整えて品質を高めることもデータの良し悪しを評価する上で重要になります。
データクレンジングによって、社内の部署ごとに異なるデータ形式を共通の規格に整えることができます。データ形式が統一されることによって、複数のデータベースを用いた大規模なデータ分析を行う際も、精度の高い分析結果が期待できます。
効率的な分析ができる
データの内容が正確だったとしても、データ形式や数値、単位などの表記がそろっていなかった場合、分析結果に誤りが発生する可能性が高くなります。データクレンジングは、不統一なデータの形式や表記揺れを正し、分析しやすい形に整えることで、業務効率化と同時に分析ミスが起きるリスクを低減する役割を果たします。
データを用いて事務作業をしたり、マーケティング戦略を練ったりする場合も、整理されたデータを用いることで効率よく業務を進められ、企業全体における生産性の向上も期待できます。
データベース利用時のコスト削減
クラウド型のデータベースサービスでは、データ量に応じて利用料金が決まる従量課金制であることが多く、データ量が少ないほどコストを抑えられます。データ分析を行う際には、事前にデータクレンジングを行って分析に必要ないデータを削除しておくことがお勧めです。データクレンジングによって必要なデータのみを残すことで、データベースの利用コストを抑えられるだけでなく、分析の効率化や精度の向上も期待できます。
主なデータクレンジングの手法
データクレンジングによってデータを整える手法には、主に次のようなものがあります。
手法 | 概要 |
---|---|
単位変換 | 分析処理がしやすいよう、データの単位を統一する |
重複データ除去 | 同一内容の重複データを削除する |
データ型変換 | 分析処理がしやすいデータ型(データの種類)に変換する |
データの正規化 | 扱いやすいデータの形式に整える |
異常値除去 | 外れ値(ほかと比べて極端に差がある値)など、データの基本統計量に影響のおよぶ異常値を削除する |
欠損値の処理 | 欠損値(取得したデータにおいて一部またはすべてが欠けている値)を含むデータを削除したり、ほかの値で補完したりする |
データトリミング | データの先頭や末尾に不要なスペースが入っていた場合、削除する |
フィルタリング | 必要な範囲のデータを絞り込む |
エンコーディング | 一定のルールに従ってデータを目的の形式に変換する |
表記揺れの統一 | 旧字体と新字体、全角と半角など同一内容であっても異なる表記のデータを一つの名称に統一する |
これらはデータクレンジングの代表的な手法ですが、データの可視化や分析に与える効果が大きい上、Microsoft Excelなどのツールでも実施しやすいという特長があります。データクレンジングに取り組むに当たり、何から始めたらいいかわからないといった場合は、ぜひ上の表でご紹介した10の手法からお試しください。
データクレンジングの流れ
前述のとおり、データクレンジングにはさまざまな手法がありますが、分析などに必要なデータの内容によっては、適用する必要がない手法もあります。そのため、データクレンジングの際は「どのようなデータを抽出したいか」を明確にした上で、必要なデータクレンジング手法を適用することが大切です。ここでは、データクレンジングの進め方を大まかにご紹介します。
データの分析目的、活用目的を明確化する
データを収集したら、まずはデータ分析を行う目的と、収集したデータを用いてどのようなことを知りたいのかを定義します。そして、分析で得られた結果をどのように活用するか、活用目的を明確化させることが重要になります。
目的に関係のないデータにまでデータクレンジングを実施することは、余計な工数がかかってしまい非効率的です。最小限の工数でデータ分析を行うために、データクレンジングを行う前には、どのような目的でデータを活用するのかを明確にしておく必要があります。
分析に必要なデータを定義する
データ活用の目的を明確化したら、必要なデータは何かを特定します。データベース内で必要となる項目や、データに適用する計算式を定義することで、分析に必要なデータは何か、目的とする分析にはどのくらいの粒度のデータが必要なのかが把握できます。
現状のデータから課題点を見つける
目的と必要なデータの定義に基づき、収集したデータを確認して「必要な項目がそろっているのか」「データの粒度は分析に適しているか」を確認します。事前に必要なデータの状態を定義することで、収集したデータと比べた際の課題も見つけやすくなります。
課題を特定する際は、その課題が目的とする分析においてどれくらい重要度が高いのかも考慮して、優先順位を設定することが大切です。また、データクレンジングを行うだけでは解決が見込めない課題に対しては、データマネジメントの見直しや、システム改善におけるアイデアとして、今後の対策課題とします。
優先順位を基にデータクレンジングを行う
収集したデータの課題が特定できたら、データクレンジングを始めます。データクレンジングはクラウドサービス(SaaS)などで提供される専用のツールでも可能ですが、Microsoft ExcelやPythonのデータ解析ライブラリであるPandasを用いて行うこともできます。
ツールを用いたデータクレンジングは、効率的に進められるメリットがある一方、自分の望みどおりのデータ加工が行われたかを確認する作業や、結果に不備があった場合に原因を探ることが難しいというデメリットもあります。
まずは、手作業で前述の手法を1つずつ試してみることをお勧めします。ある程度は手作業でデータクレンジングを進め、行った手法が適切だった場合にツールを用いて自動化させることで、無駄なく作業が進められます。
データクレンジングの注意点
データクレンジングはデータの可視化や分析の効率を上げる上で有効な手段ではありますが、データの品質におけるすべての課題には対応できるわけではありません。
例えば、数値に抜けがあった場合は、そのほかのレコードの数値を基にして補完するということができます。しかし、住所や会社名、人名などのデータの欠損に対しては手作業で入力する必要があります。こうした問題点の対策としては、データ登録の段階で入力漏れを防げるよう入力必須項目に設定しておくといった方法で回避することになります。
データを常に整理された状態に保つには?
顧客情報は重要な会社の資産であり、常に情報を最新に保ちながら、重複や表記揺れのないように整理する必要があります。例えば、社内の複数名が、同一人物から別々のタイミングで名刺を受け取った場合、役職や連絡先が異なることもあります。そのため、名刺を管理する上で注意が必要です。
このような事態を避けるためには、名刺情報の入力代行サービスや、名刺管理ツールを利用することがお勧めです。営業支援 名刺管理サービス「SKYPCE(スカイピース)」では、システム上でデータとして名刺の登録および管理ができ、すでに登録済みの名刺と同一人物の新しい名刺が登録された際に、最新のデータへ自動的に更新されます。
▼SKYPCEの概要については、こちらのページをご覧ください
営業支援 名刺管理サービスのSKYPCE:SKYPCEとは
まとめ
この記事では、データクレンジングのメリットや手法、大まかな流れをご紹介しました。有用なデータ分析を行うために、データの正確性と品質の高さは重要です。精度の高い結果を導き出すためにも、データクレンジングを行って不要なデータの削除や形式の統一を行うことが重要です。前述のとおり、データクレンジングはMicrosoft Excelなど身近なツールでも取り組めるため、記事内で紹介した各手法を参考にぜひお試しください。