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公開日2024.02.05更新日2024.09.27

深耕営業とは?目的や向いている人、意識すべきポイントを解説

著者:Sky株式会社

深耕営業とは?目的や向いている人、意識すべきポイントを解説

深耕営業を行うことで、既存顧客の現状を詳しく把握したり、さらなる課題やニーズを見つけ、アップセルやクロスセルにつなげたりすることが期待できます。長期的な売上や利益を維持する際にも既存顧客へのアプローチは重要なため、新規開拓営業だけではなく深耕営業にも注力することが大切です。この記事では、深耕営業で重視されるスキルや向いている人、意識すべきポイント、役立つ営業テクニックなどをご紹介します。

深耕営業とは

深耕営業とは、既存顧客との関係を継続させながら、適切なタイミングで定期的にフォローアップを行い、さらに関係性を深める営業手法を指します。深耕営業は、既存顧客との関係を深めることを目的としているため、「田畑を深く耕す」という「深耕」という言葉が当てられており、関係の継続だけでなく、リピート購入や契約継続を促したり、アップセルやクロスセルを図ったりする面でも重視されています。新規顧客への営業とは異なり、すでに取引を行っている顧客の潜在的なニーズを読み取り、アプローチを行う点が特長です。企業が長期的に安定した利益を獲得するためには、新規開拓営業だけでなく、既存顧客への深耕営業も意識する必要があります。

深耕営業の目的

深耕営業は多くの企業で行われており、売上や利益を向上させる上でも重要な役割を持ちます。企業が深耕営業を行う目的は次のとおりです。

既存顧客の現状把握

既存顧客に対しては、自社の商品やサービスを売って終わるのではなく、商品やサービスを利用したことでどのような変化をもたらしたか、反対にどのような課題が出てきたかなど、定期的に顧客の現状を把握することが大切です。既存顧客の現状を的確に把握しておくことで、適切なタイミングでのフォローや、顧客にとって必要な商品やサービスの提案などがしやすくなります。

既存顧客の潜在ニーズをくみ取る

深耕営業では、既存顧客が自社の商品やサービスを契約した後に生まれる潜在ニーズをくみ取ることが重要です。契約前に抱えていた課題を解決できたとしても、商品やサービスを利用するなかで「この部分がこうなってほしい」「もっとこういうことがしたい」などのニーズが生まれる場合があります。顧客自身が気づいていない潜在的なニーズを引き出し深掘りすることで、さらにアプローチの幅を広げられます。

既存顧客のアップセルやクロスセル

既存顧客へのアプローチは、新規顧客よりも効率よく売上や利益の拡大につながる傾向にあります。営業においては「1:5の法則」があり、新規顧客を開拓するには、既存顧客の5倍のコストがかかるともいわれています。信頼関係がすでに構築されている既存顧客に対してアプローチをするため、深耕営業ではアップセルやクロスセルを狙うことが売上や利益を向上させる鍵になります。

新規開拓営業やルート営業との違い

深耕営業と新規開拓営業(一般営業)、ルート営業との違いは、次のとおりです。

新規開拓営業(一般営業)との違い

深耕営業と新規開拓営業の違いは、営業の目的とターゲットにあります。深耕営業は、すでに取引のある既存顧客へアプローチして売上や利益を拡大させるのに対して、新規開拓営業では、新たな取引先を獲得するために、まだ自社の商品やサービスを知らない顧客や、契約に至っていない顧客をターゲットとしています。新規開拓営業は、一般営業と呼ばれることもあります。

ルート営業との違い

深耕営業とルート営業は、どちらも既存顧客を対象にアプローチを行い、さらなる課題解決や取引の拡大を図る点では同じといえます。しかし、ルート営業においてはあらかじめ決まったルートで既存顧客にアプローチをするため、アプローチのタイミングやターゲットとする既存顧客が異なる場合があります。

深耕営業を行うメリット

深耕営業では、顧客とのコミュニケーションや企業の利益においてさまざまなメリットがあります。深耕営業を行う主なメリットは、次のとおりです。

顧客との信頼関係が深まる

深耕営業で既存顧客へのフォローアップや現状把握、課題解決に向けたコミュニケーションやアプローチを重ねることで、信頼関係が深まります。深耕営業によって、顧客である企業とのつながりを強化できるだけでなく、自社の商品やサービスを信頼し、長期的に利用してくれるロイヤル顧客の育成も狙えます。

新たな提案につながる

深耕営業では、既存顧客への訪問やヒアリングを複数回行うため、初回の取引時にはなかった新たな潜在ニーズをくみ取れることがあります。コミュニケーションを重ねるなかで、「今はAのサービスを利用してもらっているが、Bのサービスの方が課題を解決できるのではないか」「Cのオプションを追加したらさらに利用しやすくなるのではないか」などのアイデアが浮かんだ場合は、提案にもつなげられ、新規案件の獲得が狙えます。

顧客ニーズを的確に把握しやすくなる

深耕営業で顧客とのコミュニケーションを重ねることで、「顧客が今求めているものは何か」「顧客が目指している姿は何か」などの顧客ニーズを的確に把握しやすくなります。取引当初では見えてこなかったニーズや、顧客自身も気づいていない潜在ニーズを見極め、フォローや課題解決に力を入れることで、顧客からの信頼感や企業価値の向上にもつながります。

利益率の向上が期待できる

先述した「1:5の法則」以外にも「5:25の法則」という言葉があります。「5:25の法則」は、「顧客離れを5%改善すると、利益率が25%向上する」という法則を表しています。このように、営業活動においては新規顧客だけではなく、既存顧客へもアプローチすることが大切です。深耕営業によって既存顧客と長期的な関係を築くことで、自社の利益率を大きく向上させられることも期待できます。

深耕営業で重視されるスキル

深耕営業では、次のようなスキルが重視されています。これらのスキルは、ビジネスパーソンとして働く上でも重要になるため、押さえておくことをお勧めします。

ビジネスマナー

ビジネスマナーは、営業にかかわらず社会人として必須のスキルです。深耕営業では、定期的に顧客を訪問し、関係構築のためにコミュニケーションを重ねる必要があるため、顧客に失礼な振る舞いをしてしまわないよう特に注意する必要があります。身だしなみや訪問時の振る舞い、名刺交換の仕方や敬語の使い方など、あいまいな部分がある場合はあらためてご確認ください。

ヒアリング力

深耕営業では、既存顧客との関係を深めながら、さらなる潜在ニーズや課題を見極めます。顧客の潜在ニーズや課題を見つけるためには、特にヒアリング力が重要です。顧客の業界や興味・関心に合わせた情報やニュースをこちらから提供することで、顧客との話題を広げやすく、課題や潜在ニーズを探るのに役立ちます。

顧客の状況に合わせた提案ができる

ヒアリングをしたら、顧客から聞き出した内容を基に、既存顧客の課題や潜在ニーズに合わせた提案をします。既存顧客との関係を深め、さらに自社の商品やサービスに愛着を持ってもらうには、常に同じような提案やコミュニケーションを繰り返すのではなく、顧客の要望や状況に対して臨機応変に最適な提案をすることが重要です。

深耕営業に向いている人とは

深耕営業を行うにあたっては、次のような人が向いているといえます。また、ここで述べる内容は営業活動全般においても求められることが多いため、さまざまな営業活動でもぜひご活用ください。

質の高い情報を収集できる

深耕営業では、既存顧客自身も気づいていない潜在的な課題やニーズを探る必要があるため、顧客に関するさまざまな情報を収集し、仮説を立てながらコミュニケーションを取ります。企業のWebサイトやSNSだけではなく、顧客とやりとりした経験のある営業担当者から話を聞くなど、より多くの質の高い情報を集めることによって、顧客満足度の向上や信頼につながる提案が期待できます。

傾聴力がある

深耕営業では、既存顧客が話す内容から課題や潜在ニーズを見極めることや、それらをヒアリングのなかでうまく引き出す力が求められます。限られた時間のなかでより多くの話を引き出すためには、事前の情報収集に基づく仮説立てはもちろん、顧客の話に耳を傾け、顧客の話す時間が長くなるよう傾聴力を高めることが大切です。顧客の話を聞く際は、適度に相づちを打ったりリアクションを示すことで、話しやすい雰囲気をつくれます。

課題発見力が高い

ヒアリングで多くの情報を引き出した後は、既存顧客の課題やニーズがどこにあるのかを分析する必要があります。そのため、深耕営業ではヒアリングや傾聴力だけではなく、課題発見力や洞察力を養うことも大切です。既存顧客に、顕在的な課題やニーズへの解決策だけではなく、潜在的な課題やニーズに対する解決策を提供することで、顧客満足度も高まります。

トラブル時にも柔軟に対応できる

トラブルが起こったときや、前回の訪問時から顧客の状況が変わっていたとき、担当者変更が発生したときなど、営業活動においては臨機応変に対応しなければならない場面が多数あります。ある程度マニュアルやプロセスが整っている必要はあるものの、緊急時にも顧客に不安な思いや不信感を抱かせないよう、落ち着いて対処することが大切です。このとき、SFAなどの営業支援ツールを用いることで、顧客の状況が把握しやすくなったり、適切な対応の判断がしやすくなったりします。

忍耐力がある

深耕営業では、既存顧客と長期的な取引を進めるための関係構築を目的としています。新たな取引の成立や、既存顧客の課題解決に向けてヒアリングや提案を繰り返すため、すぐには結果が得られなかった場合も諦めず次のアプローチ方法を考えるなど、忍耐力が求められます。

深耕営業を成功させるために意識すべきポイント

深耕営業を行う際には次のポイントを意識することで、既存顧客へのアプローチをより効果的に進めることができます。

目標から逆算して計画を立てる

やみくもに行動を起こすのではなく、最終的な目標から逆算して1か月、1週間、1日のスケジュールを立て、それぞれの期間に小さな達成目標を設定することが大切です。日々の業務に追われ、アプローチの間隔が空いてしまうと顧客の興味も薄れてしまう可能性があります。「〇日までに〇〇を行う」といったように、細かく行動計画を立てることで、目標達成までの道筋が可視化できるだけでなく、目標設定が適切であるかも判断しやすくなります。

業界の動向や最新ニュースを把握する

ヒアリング時には、既存顧客に対して業界や競合他社の動向、最新ニュースなどの役立つ情報を提供することで会話の幅が広がったり、顧客のサポートにつながったりする場合があります。そのため、日ごろから顧客の企業に関わる情報は積極的にチェックする習慣をつけることが大切です。また、顧客へのヒアリング時だけではなく、定期的に顧客へメールを送信するなど、こまめに情報提供や情報交換を行うこともお勧めです。

ヒアリングは複数回行う

既存顧客の課題やニーズは流動的なものであり、業界の動向や顧客の状況によってはすぐに変わることも考えられます。また、すでに取引経験があり、ある程度の関係が構築されている場合であっても、初回のヒアリングですべての課題やニーズを聞き出せるわけではありません。そのため、ヒアリングは複数回行い、コミュニケーションを重ねながら少しずつ顧客の話を聞き出すことが大切です。

顧客の現状を常に把握する

既存顧客の状況は、常に最新の状態を把握するよう心掛けます。顧客のもとへ訪問したりヒアリングや商談を行ったりするごとに、既存の顧客情報を最新の状態に更新することが大切です。顧客情報を常に記録しておくことで、アプローチの適切なタイミングや顧客が現在求めている提案も判断しやすくなるだけでなく、ほかの担当者が自分の代わりに顧客と接触した際には、顧客が「この対応は以前してもらった」「以前も同じ内容を伝えた」と思わないように情報共有を徹底することも意識します。

顧客の立場でヒアリングを行う

ヒアリングを行うときや、顧客の課題やニーズを見極めるときには、顧客の話を自分ごととして捉えることがポイントです。顧客の置かれている状況を自身に当てはめて考えることで、「自分が顧客の立場だったらこんなことがしたいだろう」「自分が顧客だったらこんなサービスを求めるだろう」など、顧客の視点に立った考え方を意識できます。

顧客の目標を理解する

既存顧客の目線で物事を考えるにあたり、顧客の目指す姿や目標を明確に把握することも大切です。顧客に関する情報収集やヒアリングを行う際は、顧客がどのような姿を目指しているのか、どのようなことを成し遂げたいのかなどの目標を明確に理解することが大切です。これらの目標を達成に導くために自社でできることは何かを分析し、提案内容を考えます。

こまめな連絡や迅速な対応を心掛ける

既存顧客との関係を深めるためには、こまめな連絡や迅速な対応が重要です。最新情報の共有や、自社の商品やサービスを利用するなかでの現状確認などを定期的に行い、接触回数を保つことで顧客との関係を維持します。また、顧客にトラブルが生じた際や問い合わせをもらった際は、迅速に対応することで信頼関係の構築や顧客満足度の向上に寄与します。

議事録を取る

既存顧客との会話内容やヒアリングした項目は、細かく議事録として残すことが重要です。議事録に残すことで、自身の記憶と実際の会話でのずれを防げるため、正確に顧客と話した内容を把握できます。議事録を残すにあたっては、ヒアリング項目だけでなく、アイスブレイクなどの何気ない会話内容も記録することで、潜在ニーズのヒントになり得ることもあります。

営業支援 名刺管理サービスの「SKYPCE(スカイピース)」の「営業活動記録」機能では、登録した名刺ごとに、既存顧客とのやりとりの記録やヒアリング内容、案件の進捗などをひもづけることができます。

深耕営業に役立つテクニック

ここまでご紹介した内容以外にも、深耕営業をはじめとした営業活動において、顧客とのコミュニケーションをより効果的に進められるテクニックがあります。

BANT

BANTとは、営業活動を行う上で意識すべき4つのポイントの頭文字を取ってできた言葉です。BANTはそれぞれ次のような意味を表します。

B:Budget(予算) 顧客の予算に合った内容を提案する
A:Authority(権限) 決定権のある人に対して提案する
N:Needs(必要性) 顧客に必要であるものを提案する
T:Timeframe(導入時期) 顧客が必要な時期に提案する

このようなBANTの条件に適した既存顧客に対してアプローチすることで、成約率の向上が期待できます。

SPIN話法

SPIN話法とは、顧客にヒアリングを行う上で意識すべき4つのポイントの頭文字を取ってできた言葉です。SPINはそれぞれ次のような意味を表します。

S:Situation(状況質問) 顧客の現状に関する質問をする
P:Problem(問題質問) 状況質問を踏まえて、顧客の課題を抽出できる質問をする
I:Implication(示唆質問) 課題をそのままにすることで生じるリスクを示唆する質問をする
N:Need-payoff(解決質問) 今必要なのは自社の商品やサービスであることを伝える質問をする

このようなSPIN話法の流れを意識することで、スムーズに自社の商品やサービスの提案までつなげることができます。

インサイトセールス

インサイトセールスとは、インターネットやSNSの普及によって、ある程度顧客自身で商品やサービスに関する情報収集や比較検討を行えるようになった近年において、主流ともいえる営業スタイルです。インサイトセールスを行うことで、顧客自身も気づいていなかったニーズに対してアプローチができるため、成約率の向上だけでなく、競合他社との差別化や自社のブランド価値を高める点においても貢献します。

応酬話法

応酬話法とは、顧客のネガティブな発言に対し、うまく切り返すテクニックを指します。例えば、顧客の発言を繰り返すかたちで「確かに、〇〇な点がデメリットですね。しかし~」といったように、顧客の意見を受け入れながら、反対の意見を述べるなどの話し方があります。応酬話法を取り入れることで、ネガティブな発言に反論する場合も、顧客の気持ちを逆なですることなく会話を進めることができます。

まと

この記事では、深耕営業の概要やメリット、意識すべきポイントなどをご紹介しました。企業において安定した売上や利益を維持するためには、既存顧客との関係を深め、長期的な取引を続けることが重要です。効果的なアプローチを目指す際には、ぜひ記事内でご紹介した営業テクニックなどをご活用ください。