営業生産性は、営業利益の向上や、働き方改革による労働環境改善の動きから近年注目を集めている指標です。この記事では、営業生産性が重要視される理由や低下する原因、向上させるために意識すべきポイントをご紹介します。すぐに社内に取り入れられる施策もご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
営業生産性とは
営業生産性とは、企業の売上や利益を最大化させるためにどれくらい成果を出せるかを、営業活動に必要なリソースや時間を基に表した指標のことです。営業生産性を高めるためには、営業担当者個人や営業チーム、企業全体でリソースや時間を有効活用し、効率よく成果につなげる必要があります。
営業生産性と営業効率化の違い
営業効率化は、営業活動に関わる人的リソースや時間を減らすことを目的としており、営業効率化が実現することにより、生産性が向上します。つまり、営業効率化は、営業生産性を向上させるための手段の一つに含まれます。
営業生産性の計算式
営業生産性は、次の計算式で算出できます。
営業生産性 = 売上成果 ÷ かかったコスト
つまり、営業生産性を向上させるためには、売上成果を増加させることと、営業活動にかかるコストを減らし、生産効率を高めることが重要だといえます。
営業生産性の計算式をエクセルで作成する方法
複数の案件の営業生産性を計算する際は、エクセルを利用するのがお勧めです。「営業生産性」「売上成果」「かかったコスト」のセルの列をそれぞれ用意し、営業生産性の列に「=売上成果のセル / かかったコストのセル」の関数を入力します。1項目入力できたら、セルの右下から操作できるオートフィル機能を用いることで、一括ですべての案件の営業生産性を計算できます。
営業生産性が重要視される背景
営業生産性が重要視されている背景としては、次の内容が考えられます。
営業利益を伸ばすため
企業の営業利益を算出する際は、大まかに「売上-かかったコスト」で求めます。つまり、利益を最大化させるためには、売上を伸ばす以外にも、コストを減らすことを意識する必要があります。
不要な労力や費用、時間といったコストを減らし、営業活動の効率化を図ることで営業生産性を向上させることは、営業利益を伸ばすことにもつながるため、営業生産性が重要視されます。
働き方改革が推進されたため
厚生労働省による「働き方改革」の推進により、長時間労働の改善や従業員1人あたりの賃金引き上げが求められるようになり、各企業で残業やワークライフバランスの見直し、就業時間内での生産性を見直す動きが強まりました。働き方改革によって、いかに定められた時間の中で効率的に成果を出せるかを重視し、営業生産性の向上に取り組む企業が増加しています。
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営業生産性を向上させるメリット
営業生産性を向上させるメリットは、次のとおりです。
営業利益の増加
営業生産性は先述のとおり、かかったコストに対してどれだけの売上成果を出せたかによって算出されます。営業生産性が向上した場合、売上成果が伸びただけでなく、人件費などのコストの削減が要因であることも考えられます。このように、営業生産性を向上させるにあたっては、より少ないコストで売上成果を上げることが必要なため、結果的に営業利益の増加が期待できます。
ワークライフバランスの改善
営業生産性の向上は、効率良く業務を行うことにつながり、残業時間の削減やワークライフバランスの改善に寄与します。さらに、残業時間を削減することによって、従業員の心身にかかる負担が軽減され、業務中のミスや病気、過労死といったリスクを防ぐことにもつながります。
離職率の低下
厚生労働省が2023年8月に発表した「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、20代の男女の転職理由として「その他の個人的理由」「その他の理由(出向等を含む)」を除き、最も多く挙げられているのが「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」です。営業生産性を向上させるために業務の効率化を図ることで、長時間の残業や休日出勤の減少につながります。さらに、営業生産性を向上させることで営業利益の増加も見込めるため、従業員に対し賃金引き上げも実現可能であることから、離職率の低下が期待できます。
営業生産性が低い主な原因
営業生産性を高めるために改善しようとしても、どこから改善すべきか、そもそも改善点はどこなのか悩むケースも少なくありません。営業生産性が低い場合に考えられる主な原因は、次のとおりです。
営業活動を可視化できていない
営業活動を可視化できていない場合、営業担当者の日々のアクションや案件の進捗、顧客とのやりとりをマネージャーが確認できないため、現状の把握や改善点の抽出がしづらくなります。また、営業活動における進捗や顧客情報、案件ごとの売上などが整理できていない場合、顧客に対して適切なタイミングでアプローチすることが難しく、売上や利益を伸ばす機会を失うことにつながります。営業活動を可視化するためには、SFAやCRMといった営業活動をサポートするツールを活用するのがお勧めです。
営業支援 名刺管理サービスの「SKYPCE(スカイピース)」では、登録した名刺ごとに日々の営業活動を記録できます。SKYPCEに記録された情報は社内で一元管理できるため、営業チーム内での現状把握以外にも、自身での振り返りや経営層による営業方針の策定にも役立てられます。
商談の管理不足
各商談のステータスや確度などの管理が不十分な場合、商談ごとに優先順位をつけることが難しくなります。そのため、優先度の低い商談に多くのリソースを割いてしまったり、確度の高い商談に十分なリソースを費やさず失注につながってしまったりなど、売上・利益の低下につながってしまいます。リソースの配分を適切に行うためにも、各商談の状況を正確に把握できる仕組みを整えることが重要です。
また、商談管理がおろそかになることで、過去の商談から得られるノウハウを蓄積・共有できず、営業活動の属人化につながり、営業担当者によってスキルや知識に差が生じるケースも考えられます。商談実績のある顧客や、同様の業界の顧客に対して適切にアプローチを行うためにも、過去のやりとりや提案内容を振り返られるように、商談内容を記録して保管しておくことが必要です。
会議や打ち合わせの目的が明確でない
目的があいまいなまま会議や打ち合わせを行うのは、参加者それぞれの時間を浪費することにつながります。会議を行う際は会議の目的やゴールを明らかにし、アジェンダ(予定表)を作成して全体の流れを決めておくことが大切です。また、事前準備を行い、話す内容をまとめておくと、スムーズに進行できます。会議を開く際は、進行役としてファシリテーターを用意し、アジェンダからそれた内容を話さずに進行してもらうなどの方法も有効です。
根拠のない目標設定
現場のリソース状況や市場の動向などを考慮しないまま、根拠のない営業目標を設定してしまうと、達成できない目標数値を日々追うだけでなく、不要なアクションが増えてしまう原因となります。
また、無理な目標設定を行い、達成できないことが続くと、従業員のモチベーション低下にもつながる恐れがあります。あらかじめ市場や現場の状況を加味しながら、実現可能な範囲で目標を設定することで従業員のモチベーションを維持でき、生産性向上にも寄与します。
売上のあいまいな着地見込み
営業活動を行う際は、1か月など特定の期間内でどれくらいの売上が発生するかの着地見込みを設定します。着地見込みの売上金額を、根拠のないあいまいな数字で設定してしまうと、本来は達成できない目標を達成見込みとしたまま進行してしまうケースもあります。このとき、早期から着手すべきアクションが遅れてしまったり、予期せぬトラブルが生じたりすることで目標をクリアできず、売上も上げられないことにつながり、営業生産性の低下に影響します。
目標達成への意識が低い
適切な目標設定がなされていても、各営業担当者が「期限までに達成するにはどう動くべきか」「残りの日数で目標達成するには何ができるか」という意識を高く持っていないと、達成することが困難な場合も。
チーム全体で高いモチベーションを維持するためには、メンバー間で切磋琢磨できるチームワークの醸成や、目標達成時のインセンティブの付与、マネージャーの適切な指導などさまざまな施策の実施が挙げられます。チーム全体で目標に向かって意識を高く持ち、取り組めている場合、万が一目標が達成できなかった場合も、次回に向けた改善点を見つけるといった分析の精度も高くなるため、結果的に売上や生産性の向上につながりやすくなることが期待できます。
マネジメントが不十分
マネージャーが営業担当者の業務状況を管理せず、各営業担当者が個人で管理していた場合、業務の進捗や営業活動の成果が、担当者ごとの管理能力によって偏ってしまうケースがあります。管理能力は営業担当者の強みや個性として生かすこともできますが、商談を確実にこなし、目標に向かって成果を上げるためにはマネージャーが各担当者の業務状況を管理し、適切に指導することも必要です。
また、受注を獲得できた要因や、失注してしまった原因、効果的なアプローチ方法などをマネージャー側でも把握しておくことで、人材育成や営業プロセスの最適化につながります。
チーム内での情報共有が不十分
チーム内では、積極的に営業ノウハウや案件の情報を共有することが大切です。ノウハウや情報の共有が不十分だった場合、チーム内で同じミスが繰り返されたり、営業担当者を変更した際に顧客に対して失礼な対応をしてしまったりする恐れがあります。
さらに、効果的なアプローチをチーム全体で実践できず、属人化が進む原因にもなり得ます。これらのリスクを防ぐため、定期的にミーティングを行うなど、ノウハウや情報を共有できる時間を確保することがお勧めです。
資料や名刺を整理できていない
日頃から資料や名刺を整理できていない場合、必要な資料や名刺を探すのに時間が掛かり、業務に遅れが出てしまうことも。企業別に紙の資料や名刺をファイリングしたり、データの場合は保存フォルダーを分けたり、SFAなどの専用ツールを用いたりする方法がお勧めです。
SKYPCEでは、登録した名刺にタグを付与でき、検索時に活用できます。企業名や名前、名刺交換日などさまざまな条件で名刺を素早く絞り込めるため、社内、外出先を問わず必要な名刺情報をすぐに確認できます。
残業を前提とした労働環境
近年では働き方改革が推進されているものの、中には残業を前提とした給与設定や残業をよしとする企業も存在します。労働時間や残業を延ばすことは、従業員の心身に悪影響を与えかねません。また、従業員がただ給与を上げるためだけに不要な残業を行っていた場合は、企業は売上成果が上がらないまま残業代を支払うことになり、結果的に営業生産性の低下にもつながります。
営業生産性の向上につながるポイント
営業生産性を向上させるためには、次のようなポイントを意識します。
過去のデータを基に売上目標を立てる
売上目標を立てる際は、過去の数値データを基にした根拠が大切です。過去のデータを参考に目標を立てることで、達成可能な目標がどのくらいなのか、精度を高めることができます。売上目標にひもづく、各営業プロセスに対する目標を設定する際も、過去のデータや結果を参考にするよう意識します。
マイルストーンも細かく設定する
営業活動における最終的な目標を適切に設定することに加えて、マイルストーン(中間目標地点)を設定することも重要です。目標までの期限が長い場合は進捗確認や振り返りがしづらくなるため、中間地点としてマイルストーンを設定し、複数の期間に区切る方法がお勧めです。目標とマイルストーンを適切に設定し、それに向けての必要なアクションを順番に進めていくことが、目標達成と生産性向上につながります。
日々の営業活動においても「今日は〇〇の担当者と名刺を交換する」「今日はキーパーソンにあいさつをする」など小さな目標を設定し、一つずつ達成を積み重ねることで、最終的な目標の達成へ向かうことができます。
目標に対する自身の営業活動を管理する
営業生産性を向上させるために、アポイントの件数や商談の件数、受注の件数および金額などの目標に対して、自身がどこまで達成できているか、進捗を把握しておくことが重要です。
また、資料作成などの事務作業にかかる時間も計測しておくことで、1日の中で自分がどれだけ営業活動に時間を費やすことができるのかなどの見通しも立てやすくなります。進捗を把握することは「今のペースは遅くないか」「さらに改善できる箇所はないか」などを分析しやすくなり、目標達成や自身の成功体験に向けて活用できます。
営業成績の見える化
営業インセンティブや歩合制といった仕組みを取り入れることも、各営業担当者のモチベーション向上につながります。ほかにも、営業成績を見える化し、営業担当者同士で競わせるような仕組みにすることで、結果的にチーム全体の営業生産性向上に寄与する場合もあります。しかし、これらの手段は、過度に行うことで営業担当者のモチベーションの低下や精神的負担につながる場合もあるため、注意が必要です。
営業外の業務をサポートする体制を整える
営業生産性を向上させるためには、営業に関するその他業務を効率化できる体制を整えておくことも大切です。顧客からの問い合わせを担当するカスタマーサポートや、書類作成といった事務作業を担当する営業事務などを、営業担当者とは別で雇用することで、営業担当者は商談などの営業業務にリソースを割くことができ、商談数の増加や受注率の向上、営業生産性の向上にもつながります。
営業支援システムの導入
売上目標の設定や着地見込みの算出、顧客情報の管理など、営業に関わるさまざまな業務を効率よく行うためには、SFAやCRMといった営業支援システムや顧客管理ツールを活用することがお勧めです。ツールを用いることで、入力ミスなどのヒューマンエラーの防止や業務の効率化だけでなく、社内での情報共有も容易になり、営業担当者の日々の活動を支援するだけでなく、経営層が全体の営業方針を定める際にも役立てることができます。
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まとめ
この記事では、営業生産性が低下する原因や向上させるためのポイントをご紹介しました。営業生産性を高めることは、営業利益の向上だけでなく、従業員のモチベーションアップや労働環境の改善にもつながります。もし、営業生産性が低いとされる原因に当てはまった場合は、記事内でご紹介している改善施策をぜひ参考にしてみてください。