営業活動において、顧客のニーズに即した提案をするには「ヒアリング」が重要といわれています。成約率に伸び悩みを感じているときは、営業プロセスの中でも特にヒアリングの精度を見直すことが大切です。この記事では、営業におけるヒアリングの目的や主な流れ、優先的に確認したい内容のほか、営業におけるヒアリングに使えるフレームワークなどについて解説します。
営業におけるヒアリングとは顧客の課題を引き出すこと
営業におけるヒアリングとは、顧客が抱えている課題を引き出すことです。ヒアリングは商品・サービスを提案する前段階で顧客のニーズをくみ取り、より的確な提案へとつなげることを目的に行います。ヒアリングによって、現状と理想像とのギャップを明確にすることも可能です。一般的な営業活動の流れとヒアリングを行うタイミングは次のとおりです。
一般的な営業活動の流れ
- 事前準備:相手先の企業情報や業界情報を収集する
- 仮説立て:商談に先立ち、収集した情報を基に仮説を立てる
- ヒアリング:仮説を検証しつつ課題を引き出す
- プレゼンテーション:課題の解決策として商品・サービスを提案する
- クロージング:顧客の不安を解消し、成約に至る上での阻害要因を取り除く
成約率を高めるには、顧客へのヒアリングによる課題の引き出しが不可欠です。どんなに仮説立てやプレゼンテーションがうまくても、顧客のニーズや課題にマッチした提案ができていなければ成約には至りません。顧客に寄り添ったヒアリングを行うことで、着実に成約率を高めていくことが可能になります。
営業におけるヒアリングで大切なポイント
営業においてヒアリングを効果的に行うために、押さえておくべきポイントがいくつかあります。特に重要度の高いポイントは次のとおりです。
顧客の話をよく聞く・聞き出す
営業におけるヒアリングで大切なポイントは、顧客の話をよく聞くことと、課題を聞き出すことです。商談の場で、営業担当者は自社の商品・サービスの良さを伝えたいがために一方的に話しがちですが、それはあまり得策とはいえません。自社の商品・サービスがいかに優れているかを熱心に伝えたとしても、そもそも相手が興味を持っていなければ、耳を傾けてもらえないからです。営業活動においては、まず顧客の話をよく聞き、相手が置かれている状況や抱えている課題を聞き出す必要があります。聞き出すといっても、立て続けに質問すればよいというものではありません。自然な会話をして、その流れの中で質問を投げかけ、相手に気持ち良く答えてもらうためのスキルが求められます。
$related:2426
話の主語を顧客側にする
営業におけるヒアリングでは、話の主語を常に顧客側にすることもポイントです。自社の商品・サービスを売り込もうとするあまり、「弊社では……」「私がお伝えしたいのは……」といった自社を主語にした話し方をしないようにします。顧客を主語にする話し方とは、「御社では◯◯についてお困りではありませんか?」「◯◯さんはこのように感じたことはありませんか?」といったように、相手の視点に立った話し方のことです。顧客側から見た場合、自社に関心を持って話していることに好印象を抱いたり、自社の状況について踏み込んで話しやすくなったりする効果が期待できます。
自社商品・サービスについて、わかりやすくイメージできるよう伝える
営業におけるヒアリングで自社の商品・サービスについて伝える際には、相手にとってわかりやすい話し方を意識することがポイントです。そのためには、相手が得られるメリットを起点として伝えていくようにします。例えば、「弊社の◯◯の特徴としましては……」「弊社の強みは……」といった伝え方は、自社が中心の話し方です。その特徴や長所によってどのようなメリットを得られるのか、顧客がイメージしにくい可能性があります。一方、「◯◯のお悩みを解決する方法の一つとしまして……」と伝えれば、相手にメリットのある話として聞いてもらえる可能性が高まります。必要に応じて画像や動画などの視覚情報を取り入れながら、自社の商品・サービスを使うことで顧客にとってどのようなメリットがあるのか、具体的にイメージしやすいように伝えることが大切です。
営業におけるヒアリングの主な流れ
営業活動の流れの一つであるヒアリングは、事前に立てた仮説のすり合わせや、次に行う提案に結びつくよう顧客のニーズや課題を聞き出すことが目的なので、顧客との対話をしっかりと行うことが大切です。場合によっては、ヒアリングの中でプレゼンテーションやクロージングまで行うことがあります。ここでは、営業におけるヒアリングの流れについて解説します。
1. アイスブレーク
アイスブレークとは、氷を溶かすように緊張をほぐし、リラックスした状態で話を聞いてもらうためのコミュニケーションを指します。特に初対面の相手であれば、相手は緊張や警戒心を抱いている可能性があります。商談の冒頭でアイスブレークを挟み、話しやすい雰囲気にしておくことが大切です。
アイスブレークの内容としては、ビジネスとは直接関わりのない世間話をすることがよくあります。例えば、季節や天候に関する話題、最近のニューストピック、相手先のオフィス近隣の街並みなど、相手が気軽に話せる話題を選ぶのがポイントです。営業担当者自身が話すだけでなく、顧客側の担当者にも話していただくことで、お互いの人柄が垣間見え、親近感がわく効果も期待できます。
2. ヒアリング
次に、本題となるヒアリングです。アイスブレークで緊張が解けたからといって、初めから自社の商品・サービスの紹介をするべきではありません。まずは相手が置かれている状況や、抱えている悩み・課題について質問を投げかけ、深掘りしていくことが大切です。
的確な質問を投げかけるには、事前に顧客に関する情報収集を行い、相手が抱えている課題について仮説を立てておく必要があります。例えば、「何かお困りのことはありますか?」といったように漠然と聞かれても、相手は質問の意図を把握できません。仮説を基に「事業が急成長されている中で、顧客管理についてお困りではありませんか?」といった具体的な質問をすることで、相手が抱えている課題を引き出しやすくなります。基本的には、ここまででヒアリングの目的は達成できたといえます。さらに、事前準備や仮説が顧客の課題に当てはまる場合は、そのままプレゼンテーションやクロージングまで行えることもあります。
3. プレゼンテーション
ヒアリングで引き出した課題に対して、解決策をプレゼンテーションで提示します。顧客から引き出した課題が、自社の商品・サービスで解決できる場合は、そのままプレゼンテーションを行います。なお、商品・サービスの内容を中心に話すのではなく、あくまでも顧客が抱えている悩みや課題を解決するための手段の一つとして商品・サービスが役立つということを伝えていく必要があります。顧客にとっての課題と、自社商品によるソリューションを結びつけてプレゼンテーションを進めます。
課題の解決方法について説得力を持たせるには、他社の導入事例を挙げるのも効果的です。顧客と同じような課題を抱えていた他社が、自社の商品・サービスを導入したことによって課題を解決した事例を挙げることで、「自社でも同じような効果が期待できるのではないか」と自社の状況に当てはめた具体的な検討ができるようになります。
4. クロージング
クロージングは成約するかどうかを決める段階と思われがちですが、実際は1回のプレゼンテーションのみで成約することはほとんどありません。顧客はさまざまな事情によって、契約に対して慎重になる可能性があります。顧客の検討度合いを再度ヒアリングしながら、見込み顧客の購入意思を確認する「テストクロージング」を繰り返し、不安に感じている点や懸念点を解消していくことが大切です。
例えば、具体的な導入時期をどのように考えているのかをヒアリングすることで、テストクロージングができる可能性があります。もしかすると、顧客は現在利用しているサービスの契約期間が満了するまでは、現状のサービスを使い続ける予定かもしれません。この場合、契約満了の時期に合わせてサービスの乗り換えを検討してもらい、乗り換えの時期に向けて契約の話を具体的に進められます。クロージングは一度で終わらせようとせず、それまでのヒアリングで引き出せなかった阻害要因を一つずつ解消するために、何度か行います。
営業におけるヒアリングで優先的に確認する内容
商談の時間には限りがあります。限られた時間内に有意義なヒアリングを実施するには、優先的に確認する内容を決めておくことが大切です。ここでは、優先的にヒアリングで確認する内容についてご紹介します。
現状の課題や悩み
顧客が現状抱えている課題や悩みは、最優先で確認しておきたい内容です。今、困っていることや不便に感じていることのほか、利用中の他社製品・サービスについても把握できることが理想です。商談に先立って顧客に関する情報収集を実施し、仮説を立てた上で商談に臨むことで、課題を引き出す質問をしやすくなります。ただし、顧客自身が現状の課題や悩みを明確に把握しているとは限りません。顧客から「困っていることはありません」「特に問題ないです」といった回答が返ってきたとしても、現状を深掘りしていく過程で課題が浮き彫りになる可能性があります。
自社商品・サービスへの印象や疑問点
自社商品・サービスについて何らかの予備知識がある相手であれば、現時点での印象を確認します。現状での顧客の知識量や、抱いている印象・イメージによって、提案までの流れが大きく変わるからです。例えば、自社商品にすでに好印象を抱いているようなら、より多くのメリットを知ってもらうことで成約へと近づけます。反対にマイナスイメージを抱いているようなら、懸念を解消したり誤解を解いたりしなくてはなりません。疑問点に関しても同様です。顧客が気になっていることや、知りたいことを抱えている状態で話を進めてしまうと、疑問点が気になってしまい、話が通じない可能性があります。営業担当者が話したいことや伝えたいことをアピールするのではなく、顧客の視点に立ってヒアリングを実施していくことが大切です。
希望の納期やスケジュール
顧客に納期やスケジュールの希望があるかどうか、早い段階で確認しておくことをお勧めします。たとえ商品・サービスに関心を示していただけたとしても、納期が間に合わないことが判明して成約に至らないこともあるからです。また、先に相手の希望を聞いておくことで、契約に前向きかどうかがおおよそ判断できます。希望納期の明確な返答がある場合、契約を真剣に考えている可能性があると考えられます。反対に「将来的には導入したいが、まだいつかはわからない」というような曖昧な返答だと、契約の可能性が低いと考えることもできます。その場合は、顧客の状況を把握しておくことが重要です。
予算や希望価格
顧客が想定している予算や希望価格についても、できるだけ早い段階で確認することをお勧めします。予算に応じて提案するべき料金プランなどを絞れるからです。想定外に高額なプランを提案されるのではないか、といった懸念や不安を顧客に感じさせる可能性が少なくなり、商談を進めやすくなります。顧客が提示した希望価格が自社の販売価格と比べてよほど低くない限り、成約できる可能性は十分にあります。前述の希望納期やスケジュールと同様に、顧客が現状どの程度契約を検討しているかを知る手掛かりにもなります。
契約決定の流れ・決裁者の確認
契約が決定した後の流れや、契約に関する決裁者について確認しておくことも重要です。例えば、相手先の役員が決裁者の場合、顧客は社内プレゼンテーションを実施して意思決定を仰ぐ可能性があります。この場合、社内プレゼンテーションに必要な資料やデータなどを提供することで説得力が増し、決裁が下りやすくなることも考えられます。商談の場に決裁者が同席しているかどうかも重要なポイントです。その場に決裁者がいれば、契約までスムーズに話を進められる可能性が高まります。特に法人営業の場合、キーパーソンが誰であるのかを早い段階で把握しておくことが重要です。
他社の見積もり状況や商談スケジュール
すでに他社から提案を受けているのか、見積もり状況や今後の商談スケジュールも含めて確認します。他社が提案中であれば、その企業の商品・サービスにはない自社の強みをアピールする必要があります。また商談では、話がまとまるのが早かった提案元を優先して契約することも少なくありません。すでに他社と商談を進めているようなら、自社の商談スケジュールを前倒しにしたほうがよいこともあります。比較検討している他社の商品・サービスが判明すれば、顧客のニーズをより具体的に把握するためのヒントとなる場合もあります。進行中の商談が自社だけとは限らないという視点を、常に持っておくことが大切です。
営業におけるヒアリングに使えるフレームワーク
営業におけるヒアリングを効果的に進めるには、フレームワークを活用することをお勧めします。取り入れると効果的なフレームワークは、次のとおりです。
3C分析・5C分析
3C分析は自社のマーケティングにおける内部要因と外部要因を分析するための手法で、主に事業計画やマーケティング戦略を策定する際に活用されることが一般的です。 また5C分析は、昨今の市場環境の変化に合わせて、3C分析に「Consumer(顧客)」と「Community(地域)」を加えた手法です。他社の商品・サービスを扱っている企業や、個人間取引をサポートするサービスを扱っている企業などでは、5C分析を活用することでより詳細な分析が可能です。 どちらの分析手法でも、「自社」の部分を「顧客」に置き換えることにより、顧客が置かれている状況の分析に活用できます。
3C分析の3つの要素
- Company(自社):自社の強みやアピールポイント
- Customer(市場):自社とってのターゲットや市場ニーズ
- Competitor(競合):自社の競合相手となる企業の動向
5C分析の5つの要素
- Company(自社):自社の強みやアピールポイント
- Customer(中間顧客):自社と顧客との間に入っている事業者
- Competitor(競合):自社の競合相手となる企業の動向
- Consumer(顧客):自社にとってのエンドユーザー
- Community(地域):自社のビジネスに影響を与える地域社会の要因
BANT
BANTとは、BtoB営業において必ずヒアリングしておきたい重要な情報をまとめたフレームワークです。BANTをもれなく聞き取ることで、成約を阻害する要因を事前に把握しやすくなります。クロージングの段階で想定していなかった阻害要因が出てくるのを防ぐためにも、次に挙げる4つの要素をあらかじめヒアリングしておくことが大切です。
BANTの4つの要素
- Budget(予算):どの程度の予算を確保できるか、どの程度の価格を想定しているか
- Authority(決裁権):決裁権を握っている人物は誰か
- Needs(必要性):導入する必要性を感じているか、何を解決するために導入したいのか
- Timeframe(導入時期):いつまでに導入する予定か、導入スケジュールをどのように想定しているか
SPIN話法
SPIN話法とは、顧客自身に課題を見つけていただき、解決する必要性に気づいていただくための話法です。次の順序で質問していくことで、顧客は自社の課題や解決に向けた取り組みの必要性を実感しやすくなります。自社側から課題を指摘したり解決策を提示したりするのではなく、質問を投げかけることで顧客に自社分析を促すことがポイントです。
SPIN話法の4つの要素
- Situation Questions(状況質問):顧客が現在置かれている状況に関する質問
- Problem Questions(問題質問):顧客が抱えている問題に関する質問
- Implication Questions(示唆質問):顧客が気づいた問題点の重要度や影響の大きさに関する質問
- Need-Payoff Questions(解決質問):問題が解決した場合のメリットに関する質問
MEDDICモデル
MEDDICモデルは、企業の購買プロセスを把握する上で必要とされる情報をまとめたフレームワークです。以下の情報を引き出していくことで、受注予測を立てやすくなります。
MEDDICモデルの6つの要素
- Metrics(測定指標):顧客が自社の商品・サービスに寄せる期待や利益を測定するための指標
- Economic Buyer(決裁権限者):商品・サービスの導入に関して決裁権を握る人物
- Decision Criteria(意思決定基準):クリアすべき技術的基準や想定している予算
- Decision Process(意思決定プロセス):商品・サービスの導入に至るまでの手順や決裁フロー
- Identify Pain(課題):商品・サービスを導入することで解決できる課題
- Champion(擁護者):決裁権限者に対して影響力があり、商品・サービスに関心を寄せている人物
営業におけるヒアリングを効率よく実施する取り組み
営業においてヒアリングをする流れや利用するフレームワークを決めたら、実際に取り組んでみることをお勧めします。次に挙げる2点を取り組むことで、営業におけるヒアリングを効率よく実施できます。
研修・ロールプレーイングを行う
営業におけるヒアリングの基本的な流れを研修で学んだり、学んだ知識を模擬的に実践するロールプレーイングを行ったりすることは、営業におけるヒアリングのスキルを上げるトレーニング方法の一つです。ヒアリングのスキルを上げることで、商談の場で効率よくヒアリングを実施できるようになります。
まずは研修で基礎的な知識を習得し、知識を実践で生かせるようにロールプレーイングを実施します。なお、ロールプレーイングは、実際の商談を想定した練習ができるので有効です。さまざまなパターンでロールプレーイングを繰り返すことで、状況に合わせて対応しやすくなります。また、ロールプレーイングを通じてフィードバックを得ることは、自分では気づきにくい話し方や伝え方の傾向を把握する上で役立ちます。ロールプレーイングは、営業におけるヒアリングのスキルをブラッシュアップするために適した方法です。
営業支援ツールを使う
営業におけるヒアリングを効果的かつ効率よく実施するには、SFA(営業支援システム)や名刺管理ツールといった営業支援ツールを活用することをお勧めします。SFAとは、案件ごとの進捗や顧客の状況を一元管理し、情報を共有するためのツールです。事前にSFA上でヒアリング項目をまとめておき、聞き取った内容を商談後に入力していくことで、現在の状況をほかの営業メンバーや上長と共有できます。
名刺管理ツールとは、受け取った名刺情報の管理を社内で一元化し、顧客情報の共有を可能にするツールです。例えば、決裁者が判明した際、決裁者に関する情報や、その人物と過去に話したことのある営業担当者の有無といったことをチェックできます。こうしたツールを活用することで、営業におけるヒアリングを効率的に進めることが可能です。
効率的な営業活動を行うなら営業支援 名刺管理サービス「SKYPCE(スカイピース)」がお勧め
営業におけるヒアリングは、契約の成約率を左右する重要な要素です。営業活動の中で顧客のニーズや課題を聞き出すことを目的に行い、自社商品・サービスでどのように課題解決ができるのか、次に続くプレゼンテーションやクロージングのために必要な行程です。
営業におけるヒアリングの効率を高め、商談をより有意義なものにするには、社内の人脈を可視化し、顧客情報を組織で共有していくことが大切です。営業支援 名刺管理サービス「SKYPCE(スカイピース)」は、名刺のデータ化や顧客情報の共有、情報検索などに役立つ名刺管理ツールです。営業活動で得た情報を記録できるため、ヒアリングした内容の記録を社内で共有することができます。また、顧客企業に関するニュースを表示する機能も搭載しているため、顧客に合わせた提案内容の選定にお役立ていただけます。
適切なヒアリングによって効率的な営業活動を行いたい事業者様は、ぜひ「SKYPCE」の導入をご検討ください。
お問い合わせ- 資料ダウンロード
営業支援 名刺管理サービス「SKYPCE」のお問い合わせ- 資料ダウンロードはこちらから