個人事業主が名刺を持つメリットは? 作成のポイントや注意点を紹介
個人事業主として働いている人の中には、名刺を作成する必要があるかどうかを悩んでいる方もいるのではないでしょうか。名刺は、人脈や新たな顧客を獲得する上で非常に有効なツールです。自ら営業活動をして仕事を獲得しなければならない個人事業主においても、名刺を作成することでさまざまなメリットを得られます。この記事では、個人事業主における名刺作成のメリットや名刺に記載するべき情報、個人情報を記載することのリスクと対処策などについて詳しくご紹介します。
個人事業主が名刺を持つメリット
個人事業主であっても、名刺を持っているとビジネスにおいて多数のメリットがあります。具体的な利点として、以下のような内容が挙げられます。
スムーズにあいさつができる
初対面のクライアントとあいさつをする際、まず名刺を交換するというのはビジネスシーンでよくあることです。相手から名刺を渡された際に自分の名刺を持っていないと、失礼にあたるケースもあります。
仕事をする上で人脈作りが重要なのは、会社員でも個人事業主でも変わりません。あいさつをスムーズにするためだけでなく、相手にマイナスな印象を与えないためにも、名刺は作っておいたほうが良いといえます。
信用を得やすくなる
個人事業主には、個人であるために社会的信用を得るまでに時間がかかるという課題があります。特に実績や知名度が不足しているうちは、クライアントからの信用を得るためにも名刺を持っておくのがお勧めです。
名刺を渡すことで、肩書や事業内容、実績などの情報を相手に伝えることができるため、信頼を獲得しやすくなるという利点があります。
自己紹介の時間を短縮できる
名刺に情報がそろっていれば、口頭で連絡先などの細かな情報を伝える必要がなくなります。最低限の自己紹介で済ませることができるため、その分早く本題に入ることが可能です。
打ち合わせや商談のために集まっているのなら、ビジネスに割ける時間が少しでも長いほうが有意義である、という考え方もあります。名刺は、礼儀を守りながら余計なやりとりを省くことができる便利なツールです。
会話が弾みやすい
打ち合わせを進めるにあたり、初対面の相手ばかりで緊張感が生まれてしまう、ということも起こり得ます。そんな時、名刺に書かれた情報が会話のきっかけとなり、コミュニケーションを円滑に進める助けとなる可能性があります。
名刺を通して共通点が見つかったり、事業内容に興味を持ってもらえたりすることで、お互いがリラックスした状態で打ち合わせに臨めます。
営業活動に役立つ
街中やインターネット上で見る広告は手元に形として残らず、チラシやパンフレットは興味がなければ捨てられてしまいます。一方、名刺は受け取ってもらいやすく、相手の手元に残ることも多いため、宣伝のためのツールとしても優秀です。
近年では、名刺にQRコードを載せるケースも増えており、事業内容やサービスの詳細を紹介するWebサイトへ名刺から気軽にアクセスできるようになりました。そこからサービスについて興味を持つ人がいれば、新たな仕事の依頼につながる可能性もあります。
自分を印象づけられる
個人事業主は、事業内容を知ってもらうための営業活動はもちろん、自身や事業のイメージについてのブランディングも自分の手で行わなければなりません。
名刺のデザインを工夫すると、名刺を渡すだけで視覚的にブランドイメージを伝えることができるというメリットがあります。目を引く名刺なら印象に残りやすく、継続した依頼につながることも期待できます。
個人事業主が名刺に記載する情報は?
実際に名刺を作る際には、どのような情報を記載するとよりメリットを得やすくなるのでしょうか。個人事業主が名刺に載せるべき項目には、以下のようなものがあります。
① 名前
名刺における名前は、最も重要、かつ最初に目に触れる情報であり、記載は必須です。ただ。ペンネームや芸名をはじめ、本名とは別のビジネスネームがある場合には、本名を記載しなくても問題ありません。
名前がほかの情報よりも目立つようにしたり、読みづらい漢字があればフリガナを記載したりするなど、相手に伝わりやすく、印象に残るデザインにすることも大切です。
② 屋号
個人事業主の場合、屋号を設定している人も多いのではないでしょうか。屋号は法人でいえば会社名にあたる重要な情報であるため、名前やビジネスネームとは別に屋号がある場合は併記する必要があります。
屋号は必ず設定しなければいけないというものではありません。ただ、屋号があることで事業内容を端的に伝えやすくなったり、職種によっては名前よりも屋号で認識されるケースもあります。正しく表記し、伝わりやすいデザインになるよう工夫しましょう。
③ 肩書
次に、事業の中で自身が担っている役割や、職種名などを記載します。職種名は「デザイナー」や「エンジニア」のように、どんな仕事をしているのかひと目でわかる表記にします。
また会社法上、個人事業主は「取締役」を名乗れず、「社長」という肩書も誤解を避けるために使用しないケースが多いです。事業をまとめる立場であれば、「代表」や「CEO」といった記載が推奨されます。
店舗や事務所を構えている場合は、「店長」「所長」などの記載も可能です。そのほか、チームで事業を行っているケースでは、チーム内での立場を肩書とすることもあります。
④ 住所
個人事業主は自宅を事務所としていることも多いため、個人情報の漏洩を防ぐために、名刺に住所を記載しなくても問題ありません。ただ、郵便でのやりとりを行う場合や、飲食店・小売店の場合など、事業内容によっては住所を記載したほうが良いケースもあります。
飲食店や小売店の場合、あるいは事務所を構えている場合、所在地のアクセスの良さやコンタクトの取りやすさは顧客の獲得につながる重要な情報となります。名刺の裏面に地図を載せたり、営業時間を併記したりするとより効果的です。
またクライアントによっては、住所の記載がないと信用を得にくいこともあるため、自宅住所とは別に、レンタルオフィスなどの公表可能な住所を用意するのも手段の一つです。そのほか、住所を途中まで記載したり、住所の記載がある名刺とない名刺を使い分けたりする方法もあります。
⑤ 電話番号
名刺には連絡先の情報が必要になるため、電話番号は記載するのが望ましいです。しかし近年はオンラインの連絡手段が浸透し、電話連絡に時間を割くことを避ける人もいるため、電話番号の記載は必須とはいえなくなってきました。
個人事業主が名刺に電話番号を載せる場合は、個人情報の流出を防ぐために、ビジネス用の番号を取得しておくと安全です。FAX番号は、業務上必要ないのであれば無理に載せなくても問題ありません。
⑥ メールアドレス
電話番号の記載が必須ではなくなっている一方、オンライン上でのやりとりが増えたことで重要度が増しているのが、メールアドレスの記載です。
電話番号と同じく、個人のアドレスを書くのが不安な場合は事業用のアドレスを取得するのがお勧めです。この際、信頼性の高い会社を通して有料の独自ドメインを作成しておくと、費用はかかりますが、クライアントからの信用を得やすくなります。
⑦ Webサイト
名刺にWebサイトのURLを記載しておけば、事業の詳細や自身の経歴、実績など、名刺に書ききれない情報を相手に伝えることができます。
必須の項目ではありませんが、個人事業主は最初に自身や事業について知ってもらうことが大切であり、記載しておいて損をすることはありません。
⑧ 事業内容
事業内容の詳細や、自身の実績・資格などの情報は、クライアントからの信頼を獲得し、新たな仕事につなげるために役立ちます。
情報が多くて名刺が見づらくなってしまう場合は、表面に必要最低限の情報をシンプルに記載し、裏面に詳細な情報を記載するのがお勧めです。裏面を利用する場合も、重要な情報が伝わりづらくなってしまわないように、記載する内容を厳選することが大切です。
⑨ SNSのアカウント
事業用のSNSアカウントを所持している場合は、名刺にアカウントの情報を記載しておきます。SNSアカウントは、連絡手段の一つとして利用することができるほか、人となりをアピールすることにも使えます。
近年は仕事にSNSを利用する人も多く、気軽なコミュニケーション手段として広く活用されていますが、投稿内容によっては悪い印象を与えてしまうこともあるので注意が必要です。
名刺の作り方
個人事業主の名刺の作り方には、自分で作成する方法と、業者に依頼する方法があります。費用はかかりますが、印刷会社やデザイナーを頼ったほうが、仕上がりはきれいになります。もし自分で作成する場合は、名刺作成ツールやテンプレートを利用するのが便利です。
特に伝えたい内容が目立つように情報を整理し、フォントの種類をそろえると見やすいデザインになります。印象に残るように個性的なデザインにすることも大切ですが、受け取る側の管理のしやすさを考慮して、サイズは標準サイズにするのが堅実です。
個人事業主が名刺を活用する際に考えられるリスク
個人事業主が名刺を作る際によく悩まされるのが、「個人情報にあたる内容をどこまで記載すべきか」ということです。情報の取り扱いに注意しなければ、以下のような問題が起こるリスクがあります。
第三者によるなりすまし
名刺に詳細な個人情報が記載されていると、第三者がその情報を使ってなりすまし、悪用する恐れがあります。
たとえば、有料のサービスや出会い系サイトへの登録に情報を利用されるケースがあるほか、飲食店やタクシーなどで名刺を渡してつけ払いにされるといったケースもあり、身に覚えのない高額な請求が来る可能性があります。
個人情報の横流し
個人情報は名簿として売買されており、横流しするために情報を集める犯罪者もいます。名刺に記載された内容も、このような名簿の一部として横流しされる危険性があります。
売られた名簿は、電話番号やメールアドレス、住所の情報を求めているセールス業者などの手に渡ります。その結果、しつこい営業活動や怪しい勧誘の被害に遭う可能性が高くなってしまいます。
詐欺による被害
なりすましのさらに悪質な事例として、商品の購入に個人情報を使用されるというケースがあります。犯人は入手した個人情報を使って大量の仕入れを行い、商品をだまし取って、請求書は個人情報を悪用された人のもとに届くという手口です。
また、電話番号や住所の流出により、オレオレ詐欺や架空料金請求詐欺といった特殊詐欺の被害に遭うケースもあります。
営業電話やメールの増加
先述したように、流出した情報は悪質な営業や勧誘を行う業者の手に渡る可能性があります。仕事のために取得した電話番号やメールアドレスの情報が流出し、営業電話や迷惑メールなどが大量に来てしまうと、業務に支障が出ることも考えられます。
また、住所が流出すれば訪問者にも警戒しなければなりません。家族と同居している住所であれば、自分だけでなく家族にまで危険が及ぶ恐れもあります。
個人事業主の名刺のリスクへの対処方法
先述したようなリスクは、どのような方法で回避すれば良いのでしょうか。
結論からいうと、リスクを背負ってまであらゆる個人情報を名刺に記載する必要はありません。ただ、どうしても記載しなければならない内容がある場合には、以下のような対策が可能です。
名刺を2パターン用意し、相手に応じて使い分ける
名前を覚えてもらうために不特定多数に名刺を配ることもあれば、一定の信頼がある相手に対し、詳細な連絡先を伝えるために名刺を渡すこともあります。
そこで有効なのが、2パターンの名刺を用意しておく方法です。特に住所は、ストーカー被害や空き巣、嫌がらせなどの被害につながる恐れがあるため、記載がある名刺とない名刺を用意しておき、相手に応じて使い分けるのが良いです。
事業用の住所を借りられるバーチャルオフィスを利用する
事業を始めたばかりで事務所を構える資金がない場合や、作業環境が自宅で事足りている場合には、賃貸契約よりも安価で住所だけを借りられる「バーチャルオフィス」を利用するという方法もあります。サービスによっては、郵便物や電話の転送にも対応しています。
実体のある場所が必要な場合も、レンタルオフィスなどを活用すれば、賃貸オフィスを契約するよりもコストを抑えながら手軽に住所を用意することができます。
事業用とプライベートの携帯電話を分ける
個人事業主が自身の個人情報を守るためには、プライベートと仕事用で連絡先を分けることが大切です。
連絡さえ取れれば、名刺に記載する電話番号は固定電話でなくても問題ありません。プライベート用とは別に事業用の携帯電話を用意しておけば、電話番号の記載に困ることもなく、使い分けもできるので便利です。契約するサービス次第では、費用も大幅に抑えられます。
名刺の作成費用は経費として計上できる
名刺を作成する際には、たとえ少ない枚数であっても費用が発生します。個人事業主の名刺作成にかかる費用は、経費として計上することが可能です。勘定科目は、「消耗品費」や「広告宣伝費」とすることが多いです。なお、名刺のデザインをデザイナーに依頼した場合の依頼料も、「広告宣伝費」などの勘定科目で経費に計上できます。
まとめ
個人事業主にも名刺が必要な理由や名刺に記載すべき項目、名刺の使用に伴うリスクなどをご紹介してきました。自力で実績や知名度を積み上げていく必要がある個人事業主だからこそ、名刺を持っていることが強みになる場面も多々あります。
個人情報の漏洩を防ぐためには、「事業用の連絡先を用意する」「名刺を2種類用意する」といった工夫をすることが大切です。本当に記載が必要な内容は何か、しっかりと情報を整理しながら、印象に残る名刺を作成して事業の発展に役立てていきましょう。
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オンライン上でのやりとりが増えている昨今でも、紙の名刺交換はビジネスシーンにおいて日常的に行われています。個人で事業を展開している場合も、会社に属している場合も、受け取った名刺情報は重要な資産です。
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