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Sky株式会社

公開日2024.09.03更新日2024.09.04

SPIN営業とは? 必要なヒアリング力を鍛える方法と具体例を紹介

著者:Sky株式会社

SPIN営業とは? 必要なヒアリング力を鍛える方法と具体例を紹介

営業活動を効果的に行うためのフレームワークの一つがSPINです。商談において、4つの質問を組み合わせながらヒアリングを行うこと(SPIN話法)で、顧客が潜在的な課題に気づくように働きかける営業手法です。営業担当者が課題を指摘したり、解決策を提示したりするのではなく、顧客自身が課題に気づき、自ら解決策を求めるため、以降の商談がスムーズに進められます。この記事では、SPIN話法の概要や4つの質問、SPIN営業を成功させるためのポイントなどを紹介します。

SPIN話法とは何か

SPIN話法とは、営業の中で活用する商談を成功させるためのフレームワークの一種です。SPINのSはSituation(状況質問)、PはProblem(問題質問)、IはImplication(示唆質問)、NはNeed-payoff(解決質問)を意味し、この順番で4種類の質問を展開することで顧客の潜在的なニーズを引き出し、適切な提案を行うことを主な目的としています。

なおSPIN話法は、イギリスの行動心理学者であるニール・ラッカム氏によって、12年の調査と3万5千件もの営業訪問に基づいて考案されました。IBM社やマイクロソフト社などの世界的な企業でも採用されている、BtoB向けの営業手法です。ここでは、SPIN話法の特徴について紹介します。

SPIN話法の特徴1:顧客の潜在ニーズを引き出せる

SPIN話法では、明確な意図を持った質問を投げかけながら会話を展開し、その過程で共感を促しながら課題を明らかにします。そのため顧客側には、「一方的に営業担当者に売り込まれている」という感覚ではなく、「自分の話を親身に聞いてもらっている」という感覚が生まれやすいです。顧客が自発的に意見を出しやすく、これまで顧客自身も気づいていなかった本音や、潜在的なニーズを引き出すことにつながります。

SPIN話法の特徴2:顧客の温度感を高められる

SPIN話法を活用した会話により、顧客自らが自社の課題に「自分ごと」として気づき、解決策を見いだせるようになっていきます。営業側から一方的に提案されるのとは異なり、信頼感も生まれやすく、商談に対する顧客の温度感が高まりやすいです。結果として提案内容に対する心理的な障壁も低くなり、営業活動の成功が見込めます。

営業にヒアリング力が大切な理由

営業活動の中で顧客にとって優れた提案を行うためには、相手の状況や、相手が本当に求めているものは何なのかを引き出す「ヒアリング力」が欠かせません。ヒアリング力が大切な理由について、詳しく解説します。

理由1:押し売りを求める顧客はいない

相手のことを詳しく把握する前から一方的に「いかに自社の商品が優れているか」を語り始めるセールストークでは、相手の心を突き放してしまいます。不快な押し売り感をなくし、お互いに気持ちの良い取引をするためには、相手の話をよく聞いて会話のキャッチボールを積み重ねることが非常に大切です。

理由2:顧客のニーズをしっかりと満たす提案が必要

顧客のニーズをしっかりと満たす提案を行って商談を成功させるには、顧客の置かれた状況や課題を入念に確認する必要があります。ただ、顧客の中には、自社の課題に気づいていない方や説明が不得意な方もいるため、「何に困難を感じているのか」「明らかになった課題をどのように解決したいのか」といった意向を、さまざまな角度から丁寧にひも解くことが求められます。

SPIN話法の4つの質問

続いて、SPIN話法で用いる4つの質問、Situation(状況質問)、Problem(問題質問)、Implication(示唆質問)、Need-payoff(解決質問)の特徴について、扱う商材に応じた具体例とともに紹介します。

1:Situation(状況質問)

Situation(状況質問)は、SPIN話法の最初に行う、顧客の現状を理解するための質問です。「いくつかお伺いさせてください」などと簡単に前置きをした上で、可能な限り手短に、簡潔に質問を済ませるのが良いとされています。状況の把握に時間をかけ過ぎてしまうと、顧客に不快感を与える恐れがあるので注意が必要です。

なお、この質問の目的は、あくまでも「自社が提案したい商材に関連した状況」を把握することです。仮に潜在ニーズを引き出せたとしても、自社商材では解決できないものであれば商談は成立しません。

状況質問の例としては、以下のようなものが考えられます。

  • 名刺管理ツールの場合:営業担当者が集めた大量の名刺をどのように管理されていますか?
  • リモート会議ツールの場合:リモート会議にはどのようなツールを活用されていますか?

2:Problem(問題質問)

Problem(問題質問)は、顧客が抱えている潜在的な課題をあぶり出すための質問です。先に行った状況質問に対する回答をふまえ、いくつか仮説を立てた上で行います。

その際、相手の心理的な負担を軽くするために「YES」「NO」の2択で答えられる簡単な質問を投げかけるのが有効です。ただ、こちらから続けざまに質問することは避け、相手が自由に答えられるような質問や雑談を織り交ぜる工夫も求められます。

問題質問の例としては、以下のようなものが考えられます。

  • 名刺管理ツールの場合:必要な名刺を見つけるのに時間がかかる、部署間で顧客情報の共有がしにくいなど、集めた名刺の扱いにお困りではありませんか?
  • リモート会議ツールの場合:会議の途中で時間切れになってしまう、映像や音声の品質が低いなど、会議の進行において不便さを感じたご経験はありませんか?

3:Implication(示唆質問)

Implication(示唆質問)は、あぶり出した課題を解決する必要性に、顧客自身に気づいてもらうための質問です。「これは解決するべき問題だ」という自覚を促して、潜在ニーズを顕在ニーズへと変化させます。

ただ、どれだけ重大な課題を抱えていると判断された場合ても、あまり急いで結論を出すべきではありません。こちらから一方的に解決方法を提案するのではなく、顧客と二人三脚で考えていく姿勢を忘れずにいることで、少しずつ信頼関係を構築することができます。SPIN話法の中でも、この示唆質問は特に商談の成否に関わる重要な役割を持つといえます。

示唆質問の例としては、以下のようなものが考えられます。

  • 名刺管理ツールの場合:名刺情報を社内でスムーズに共有できたら、顧客管理や他部署との連携がしやすくなり、さらに商談の機会を増やせるかもしれませんね?
  • リモート会議ツールの場合:クリアな映像と音声で会議ができれば、スムーズにコミュニケーションが取れて会議内容も理解しやすくなり、業務時間を有効に使えるようになりそうですね?

4:Need-payoff(解決質問)

Need-payoff(解決質問)は、対話の中で顧客と一緒に考えてきた課題に対して解決策を見いだすための質問です。もし実際に課題を解決できたらどうなるかを、顧客に具体的にイメージさせることで、こちらが提案を考えている自社商品に対して強い関心を持ってもらえるよう促します。

なお、顧客が自ら解決策に気づく前に自社商品の提案をすることは避けなければなりません。あくまでも顧客自身が解決策に気づき、課題解決のためには自社商品が有効であると感じてもらうことが大切です。

解決質問の例としては、以下のようなものが考えられます。

  • 名刺管理ツールの場合:名刺から得た顧客情報をデータ化して一元管理できたら、商談の機会損失を防ぎ、売上の増加が期待できるのではないでしょうか?
  • リモート会議ツールの場合:人数や場所を問わず映像や音声の安定したリモート会議ツールを用いれば、ストレスと無駄な時間が減り、業務全体の効率化につながるのではないでしょうか?

SPIN営業におけるヒアリングの手順

ここで、SPIN営業におけるヒアリングの手順を紹介します。なお、全体的な流れそのものは一般的な営業プロセスと大きく変わりません。SPIN話法で用いる4つの質問は、主に顧客の潜在ニーズを引き出す「ファクトファインディング」に含まれていると考えられます。

SPIN営業の手順1:アプローチ

アプローチは、顧客の関心を引きつけて「詳しく話を聞いてみよう」と思ってもらうための取り組みです。顧客が興味を持ちそうな話や共通の話題を切り出し、営業の場における緊張感をやわらげていきます。

また、丁寧で明るいあいさつや好印象を与えられるような身だしなみも大切です。このアプローチの段階で前向きな雰囲気づくりに成功すると、SPIN話法の1つめ「状況質問」をしやすくなります。

SPIN営業の手順2:ファクトファインディング

ファクトファインディングという言葉には「真実を見つける」という意味があります。SPIN話法の4つの質問を用いたヒアリングを通じて、顧客の現状や課題をしっかり引き出し、解決策を一緒に考えていきます。

なお、あらかじめ顧客に関する情報を多く集めているほど問題を把握しやすく、スムーズな商談が可能です。ただ、事前情報による先入観にとらわれ過ぎると、話がかみ合わなくなり、不信感を持たれる恐れもあります。その場で1つずつ具体的な事実を確認する姿勢が大切です。

このファクトファインディングは、SPIN営業の手順の中で最も重要です。顧客の潜在ニーズを的確に捉えるため、充実したやりとりが求められます。

SPIN営業の手順3:プレゼンテーション

プレゼンテーションでは、これまでに洗い出した課題を解決する上で自社の商品が役立つことを説明します。SPIN話法の「解決質問」は、このプレゼンテーションの手順に該当すると捉えることも可能です。

大切なのは、自社商品を提案する前に、顧客の課題を解決する方法について意思疎通を図り、自社商品で解決できることを暗に示しておくことです。質疑応答を挟みながら顧客が求めている情報を的確に伝え、自社商品に対して疑念を感じられないようにする必要があります。

SPIN営業の手順4:クロージング・アフターフォロー

クロージングとは、商談の総仕上げとして顧客と契約を締結することです。その際、強引に相手を説き伏せて契約を得るのではなく、商品のメリットやデメリットを明確に説明した上で、顧客自身が深く納得している必要があります。クロージングに至るまでの過程で適切なやりとりができていなければ、提案の際に「検討してみます」などと回答され、契約の機会を逃すことにもなりかねません。

アフターフォローとは、契約を結んだ顧客への事後対応のことです。さらに強固な関係をつくるために、お礼のメールを送ったり、商品に関する相談や不具合がないかを確認します。

SPIN営業を成功に導くためのヒアリングのポイント

SPIN営業は有効な手法ですが、必ず成功するとは限りません。ただ、ここで挙げる5つのコツを把握した上で商談に臨むことで、成功する可能性をより一層高めることが可能です。

入念に事前準備をしておく

SPIN営業では質問を重ねながら顧客の現状や問題を把握していきますが、ある程度は事前情報を持っていないと、核となる質問にたどり着くまでに時間がかかりすぎてしまいます。そのため、顧客の抱える課題や予算感、競合他社など、顧客に関する情報の事前収集は必須といえます。商談の場で聞きそびれてしまうのを防ぐためにも、質問をまとめたヒアリングシートを用意しておくと便利です。

SPIN話法の適切な順番を守る

SPIN営業を行う際には、商談の途中で話を脱線させずに、適切な順番で一貫性のある質問を投げかけることが大切です。基本的な流れとして、顧客の置かれた状況と問題を手早く把握して核となる課題を見つけ出し、その課題解決の重要性に顧客自ら気づいてもらい、一緒に解決方法を導き出します。いずれかの手順を飛ばしてしまうと、顧客の潜在ニーズに沿わない提案や押しつけがましさにつながり、信頼関係を損ねる可能性があるため注意が必要です。

顧客自身が課題に気づける質問を行う

SPIN営業では、こちらが知りたい内容だけを一方的に質問するのではなく、顧客自身が課題に気づけるように促すことが大切です。こちらから課題や解決策を提案するよりも、顧客自身の口から答えを引き出す方が、積極的に課題に向き合う姿勢を得られるためです。

とはいえ、顧客の潜在的なニーズを引き出すのは決して簡単ではありません。商談の場の空気を良くする傾聴力や、本音の情報をより多く得るための質問力をあらかじめ培っておくことも大切です。

無理な売り込みをしない

SPIN営業では、無理な売り込みをしてはいけません。たとえ顧客の課題や解決策をうまく引き出せたとしても、気が焦って自社の商品をあからさまに勧めてしまうと、押しつけがましさや営業感が出てしまい、心証を悪くしてしまいます。理想的な着地は、顧客自らの口から「こんなサービスがあったらうれしいのですが、ご存じないですか?」といった言葉を引き出すことです。

アフターフォローを欠かさない

商談後には必ず、ヒアリング内容をまとめて添えて、お礼のメールを送りましょう。商品を購入いただいた場合はもちろんのこと、いったんは契約が見送られた場合にも、今後の信頼関係を構築していく上で非常に有効です。心を込めたアフターフォローを行うことで好印象を与え、継続的な契約や新規顧客を紹介してもらう機会にもつながります。

SPIN営業を現代風にアレンジ

SPIN営業は1988年に提唱されて以来、世界規模で活用されている営業術であり、基本的な原理は現代でも通用すると考えられます。しかし、当時からビジネス環境が大きく変化していることも事実であり、その影響は無視できません。ここでは、より大きな効果が見込める、現代風にアレンジしたSPIN営業のやり方を紹介します。

SPIN話法の4つの質問量のバランスを調整する

SPIN営業が提唱された時代と比べ、現代は膨大な情報が飛び交っており、企業の課題解決力も格段に向上しています。顧客自身が自覚している課題に関しては、情報収集さえすれば解決策がすぐに見つかることも珍しくありません。

こういった理由から、SPIN話法の中でも、すでに自覚のある課題を想起させやすいSituation(状況質問)とProblem(問題質問)に関しては手短に済ませ、より重要で自覚しづらい潜在ニーズを探るImplication(示唆質問)以降に多くの時間を割く必要があります。

「ソーシャルセリング」の手法を取り入れる

IT技術が発達した現代において新たに取り入れたいのは、「ソーシャルセリング」と呼ばれる手法です。ソーシャルセリングとは「SNSでの発信活動を通じて見込み客と信頼関係を構築し、購買活動につなげる営業手法」のことで、特に海外では活発に用いられています。

ソーシャルセリングの活用で、営業活動の前に顧客企業の「社風」や「喫緊の課題」などの情報を収集できることに加え、「担当者の人柄」を知るなど、中長期的な目線で顧客の課題と解決策を見いだす材料を得ることも可能です。

見込み客にとって価値ある情報の発信や投稿へのリアクション、質問対応といった双方向のコミュニケーションを通じて地道に構築した信頼関係は、契約を取りつけるまでのリードタイムを大幅に短縮してくれます。

顧客の購買プロセスをサポートする

各種テクノロジーの発展や市場の変化を受けて顧客の購買プロセスが変化した結果、特にBtoB向け商品の営業活動の難易度が高まっています。企業のステークホルダーも増え、商品の品質や価格を見る目はますます厳しくなっています。

そこで成約を勝ち取るためには、顧客の購買プロセスに目を向けて施策を講じることが必要です。SPIN営業の延長で対応しやすいこととして、まず、提案する商品の社内導入(決裁)のサポートが考えられます。例えば、社内稟議を通すのに必要な情報を事前に予想してまとめる、競合優位性が明確に伝わるデータや資料を共有する、といった動きが挙げられます。

まと

ここまで、SPIN営業に関して、必要な4つの話法やヒアリングの手順、注意すべきポイントなどを紹介してきました。SPIN営業は、顧客に寄り添いながら潜在ニーズを掘り起こし、成約につなげるための有効な手段です。強固な信頼関係の構築が可能で、継続的な受注につなげることも期待できます。

なおSky株式会社では、以下で紹介するような営業支援サービスを扱っております。よりスムーズで効果的な営業活動に向けて、お困りごとがある際はぜひご相談ください。

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