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Sky株式会社

CRM、SFA、名刺管理サービスなどビジネスにクラウドツールを活用するメリットとは?

著者:Sky株式会社

ビジネスにクラウドツールを活用するメリットとは?

パートナーアライアンス統括本部 西日本パートナー アライアンス部 シニアパートナーデベロップメント マネージャー

沼﨑 正哉

パートナー技術統括本部 テクニカルイネーブルメント部 シニアパートナーソリューション アーキテクト

塩飽 展弘

現在、業務効率化をサポートするSaaSのビジネスツールが数多く存在しています。たくさんのツールの中からどのツールを導入するか、迷っている方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の塩飽 展弘氏、沼﨑 正哉氏に、SaaSのビジネスツールを活用するメリットやツール選定の一つの指標となる「AWS 認定ソフトウェア」などについて伺いました。

  • インターネットを通じてクラウド上のシステムにアクセスし、アプリケーションが利用できるサービス。システムの更新やメンテナンスはサービスの提供者が行うため、ユーザーは常に最新の機能が活用できる。

パートナーアライアンス統括本部
西日本パートナー アライアンス部
シニアパートナーデベロップメント
マネージャー

沼﨑 正哉

パートナー技術統括本部
テクニカルイネーブルメント部
シニアパートナーソリューション
アーキテクト

塩飽 展弘

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社

世界中で広く利用されているクラウドプラットフォーム「AWS(Amazon Web Services)」を提供する日本法人。企業や開発者向けに、コンピューティング、ストレージ、データベース、AI、機械学習など多岐にわたるサービスを展開し、ビジネスのデジタルトランスフォーメーションを支援しています。

「AWS 認定ソフトウェア」を
ビジネスツール選定の一つの指標に

貴社が提供されているAWSとはどういったものでしょうか?

AWS(Amazon Web Services)は、Amazonが展開するクラウドコンピューティングサービスの総称です。自社サービスの運営のために構築していたITインフラを2006年からお客様に提供しており、現在は、コンピューティング、ストレージ、データベース、分析、ネットワーク、モバイル、デベロッパーツール、管理ツール、IoT、セキュリティ、エンタープライズアプリケーションなど、240以上のサービスがあります。

日本国内においては、民間では大手企業からスタートアップまで、公共でも中央省庁から自治体、学校まで、規模にかかわらず幅広い業種業態で個人・法人の数十万のお客様にご利用いただいています。

AWSを活用されるお客様は、ビジネスにITを迅速に活用したいという思いを持っています。そうした思いを実現するため、幅広いAWSのサービスを組み合わせ、DX推進に向けたさまざまなシステム開発にご活用いただいています。そのほかにも、SKYPCEのようにSaaSとして提供されるビジネスツールの基盤としても活用されています。

Sky株式会社は
AWSの認定プログラムを複数保有するパートナー

AWSとSky株式会社の関係性についてお聞かせください。

Sky株式会社には2つの側面があります。一つは、自社内で運用する各種情報システムやSKYPCEなどの自社商品にAWSを利用いただく「お客様」としての側面です。

そしてもう一つが、お客様のDXを支援するために、AWSを活用したシステム開発に取り組む「AWSパートナー」としての側面です。クラウドの導入支援をはじめ、オンプレミス環境で運用されている既存システムのクラウド化(リフトアンドシフト)、サービス開発や基盤構築、ガバナンスの実現・セキュリティ強化など、Sky株式会社は、自社内におけるAWS活用を通じて培われた知見を生かし、これまでに多くのお客様のクラウドプロジェクトを支援してきました。

AWSパートナーとしての経験は非常に豊富で、特定のAWSサービスを提供する際に必要な高度な技術知識と経験を証明する技術認定プログラム「AWS サービスデリバリープログラム」の認定数は国内に本社を置く企業としてはトップクラス。国内企業で初認定となった「AWS Service Catalog デリバリー」をはじめ、約1 年で7 つの認定を取得されています。

そしてこのたびSKYPCEが、弊社が実施する技術レビューを通過し、「AWS 認定ソフトウェア」となりました。これまでのノウハウの蓄積が、SKYPCEの認定にも生きたのだと感じています。

現在、ビジネスにクラウドを活用する企業が増えています。そのメリットを教えてください。

「柔軟性」「スピード」「セキュリティ」という3 つのメリットがあります。これらのメリットについて、クラウドを提供するサービス事業者と、クラウドを活用するエンドユーザーの両方の視点で語ることができます。

まず「柔軟性」について、クラウドはそのときの利用状況に応じてサーバー台数などのリソースを拡張、縮小することが可能です。サービス事業者の視点では、必要なときに必要なリソースを利用できるため無駄がなく、コストが抑えられることがメリットです。

ビジネスツールは、営業部やマーケティングの担当者、経営層など、まずは一部の担当者や部署に限って導入するケースがあります。ツールの活用が深まり全社的に利用することになった場合、サーバーなどを増強する手間がなくスムーズにユーザー数を拡張できるのは、エンドユーザー視点でもメリットです。

「スピード」とは、どういったメリットでしょうか?

エンドユーザーが、オンプレミス環境で新たなツールを導入するためには、一般的にあらかじめ利用ユーザー数などからサーバースペックを算出し、ネットワークなどの設計や機器の調達をして環境を構築する必要があります。そのため、実際にシステムを稼働させるまでに長いリードタイムが必要になることも少なくありません。しかし、クラウド上で環境を構築するのであれば、リードタイムはほとんど発生しません。

また、AWSにはデータベースや生成AI、機械学習といった最新のテクノロジーを提供するサービスがあります。サービス事業者の視点からすれば、AWSを活用することで、ゼロから開発するよりも速く、最新の技術を取り入れた機能拡張が可能です。

そして、エンドユーザーから見れば、これらのメリットを生かして開発されたSaaSのビジネスツールは新機能が随時追加されるため、競合企業よりも早く最新の技術をビジネスに生かすことができます。もちろん、合わなければすぐにツールの利用をやめることもできます。スピード感が求められるビジネス環境のなかでは、こうしたメリットは重要になるのではないでしょうか。

「セキュリティ」は安全にツールを使えるということですね。

そうです。ビジネスツールは、安全に安定して活用できることが求められるため、セキュリティは大変重要なポイントです。

AWS にとって、セキュリティは最優先事項です。セキュリティ機能の実装や厳格なコンプライアンス要件に対応し、さまざまな業界や国・地域などで適用される「PCI-DSS」「HIPAA / HITECH」「FedRAMP」「GDPR」「FIPS 140-2」「NIST SP 800-171」を含む143のセキュリティ標準とコンプライアンス認証を得ています。

これらの認証にサービス事業者が自ら対応するとなると、莫大な時間と労力を費やすことになります。AWSを活用することでコンプライアンス認証に対応したサービスをすぐに使用できます。

FTRによりソリューションの品質が高まり、
不要なリスクを抑えてビジネスに集中できる

AWSを活用したビジネスツールは、エンドユーザーが安全に利用できるということですか?

注意していただきたいのは、AWSが責任を持つことができるのはあくまでクラウドのセキュリティに関する部分であり、サービス事業者が提供するサービスに対するセキュリティは、サービス事業者とクラウド事業者で共有されていることです。AWSのサービスを活用して開発されたアプリケーション部分のセキュリティについてはサービス事業者に委ねられています。

サービス事業者は、さまざまなAWSのセキュリティに関するサービスを活用しながら、AWSの幅広いサービスを目的に応じて複雑に組み合わせて、アプリケーションを開発します。だからこそ、クラウドならではのセキュリティなどが考慮されたソリューションとなるように設けているのが、AWSファンデーショナルテクニカルレビュー(FTR)です。

FTRとはどのようなものでしょうか?

FTR は、AWS パートナーが開発したソフトウェアが、主に「セキュリティ」「信頼性」「運用上の優秀性」に関連するAWSのベストプラクティスに即していることを確認し、リスクを特定して修正するための技術レビューです。このFTRを通過したソフトウェアを「AWS認定ソフトウェア」としています。

ベストプラクティスとはどのようなものでしょうか?

AWSが提供する240以上のサービスを、積み木に例えて説明するのがわかりやすいと思います。

ソフトウェアはAWSのサービスを積み木を積み上げていくように組み合わせて利用しながら開発していきます。積み木のピースを手当たり次第に積み上げていくより、各ピースの形や大きさなどを理解した上で、使い分けながら組み合わせて積むことで、美しくバランスを取りながら全体を形作ります。

AWSのサービスの場合も、サービスの特性や組み合わせ方を十分理解して開発すれば、より無駄がなく安全に使えます。その「適切な積み上げ方」をまとめたものがベストプラクティスです。

AWSには多くのサービスがあり、自由に積み木を積み上げられるが故に、開発するサービス事業者によって積み方に差がでてきてしまいます。その積み方に改善すべき点がないか、FTRで確認していくのです。

AWS 認定ソフトウェアとなることにどういったメリットがありますか?

FTRは、主に「セキュリティ」「信頼性」「運用上の優秀性」という3 つの観点ごとに要件が用意されており、この要件を満たしているか、技術レビューを行って確認します。サービス事業者としては、これらの観点で自社製品のリスクを軽減して不要な損失を抑えたり、ソリューションの品質自体を高めたりできるというメリットがあります。

また近年、クラウドのメリットを生かし、手軽にソフトウェアやソリューションを開発・提供できる環境になっています。そのため、AWSを活用したソフトウェアを提供する企業も格段に増え、CRM、SFAをはじめとする数え切れないほどのサービスが存在しています。その中から自社のビジネスに活用するツールを選定する際、安全に安定して使い続けられるという視点は欠かせないものです。

ベストプラクティスに沿って、主に3つの観点でリスクを軽減するための要件を押さえたAWS 認定ソフトウェアであれば、ソリューションを利用するお客様にとっても、不要なリスクを負うことなく安心してビジネスの成果に集中することができると思います。ツール選定時の一つの指標にしていただけるのではないでしょうか。

AWS 認定ソフトウェアであるSKYPCEにはどういった強みがありますか?

オンラインだけでなく、コロナ禍が落ち着いた後は対面での面談も増えており、ビジネスパーソンが名刺交換をする機会は増えてきていると思います。業務で獲得した名刺を組織全体で集約して管理することは、多くの企業で行われていますが、問題は集約した名刺をどのように管理するかです。

SKYPCEは先ほど申し上げたとおり、「セキュリティ」「信頼性」「運用上の優秀性」の観点で評価した「AWS 認定ソフトウェア」です。会社の重要な資産である名刺情報を管理するために、安心してご利用いただけるソリューションだと考えています。SKYPCEのソリューションとしての成長を、引き続きご支援していきたいと思っています。

SKYPCEがAWS認定ソフトウェアを取得! FTRの要件とは?

「AWS 認定ソフトウェア」になるために、AWS ファンデーショナルテクニカルレビュー(FTR)ではどういった観点で技術レビューが行われているのでしょうか。FTRの要件などについて、引き続き塩飽氏、沼﨑氏に語っていただきました。

SKYPCEが通過したFTRとはどういったものでしょうか?

FTRにはいくつか種類があり、SKYPCEが通過したのはSaaSなどを対象とする「Partner Hosted」というカテゴリです。

FTRでは、AWSのベストプラクティスに沿ったソリューションであることを確認するための要件が設けられています。その評価の観点としては、AWSのベストプラクティス集である、AWS Well-Architected フレームワークの柱である「運用上の優秀性」「セキュリティ」「信頼性」「パフォーマンス効率」「コスト最適化」「持続可能性」という6つの柱のうち、Partner Hostedカテゴリでは、主に「運用上の優秀性」「セキュリティ」「信頼性」に焦点を当てています。

「運用上の優秀性」ではどういった点を確認しているのでしょうか?

システムは決して「作って終わり」ではありません。特にSaaSは、お客様に対して適切なサービスを提供し続けるため、機能拡張などによって定期的にアップデートが行われます。そのためFTRでは、システムをスムーズに運用し、継続的に改善できる仕組みになっているかどうかをチェックしています。

さらに、そういった定期的な改善に対応できる開発・運用体制であるかどうかについても踏み込んで確認しています。具体的にいうと、少なくとも年に1回ベストプラクティスに沿ったレビューを自社の中で行ったり、問題が発生した際にAWSと適正に連携したり、といったことが可能な体制であるかどうかがレビューの要件として組み込まれています。

「セキュリティ」においてはどういった点を確認しているのでしょうか?

セキュリティでは、AWSが責任を持つクラウドインフラ部分と、Sky株式会社のような開発側が責任を持つクラウド内の部分に分け、それぞれに責任の所在を明確にしています。弊社が責任を持つ部分がどこまでなのかを理解していただくことに加え、開発側が責任を持つアプリケーションに対しても、AWSに関する部分においては適切な設定や管理ができているかどうかをチェックしています。

開発側が責任を持つ部分もFTRで確認しているのですか?

FTRが範囲としているのは、AWSのサービスを利用した設計、設定の部分です。例えば、クラウドならではの権限設定が適切な設計指針に基づいて実施されているかといったことです。あくまでも、クラウドにおいて重要なセキュリティのポイントを押さえられているのかどうかを確認しています。

「信頼性」ではどういった点を確認しているのでしょうか?

非常時にどの時点までのデータを復旧させるのかという「RPO(目標復旧時点)」や、いつまでに復旧させるのかという「RTO(目標復旧時間)」など、システムの信頼性を表す指標が定義されていることを確認しています。

例えば、オンプレミスでは容易ではないデータセンターの冗長化は、クラウドでは実現が比較的容易です。そういったクラウドの特徴を加味した上で、お客様に提供するサービスとして適切なレベルで設計されているか、それに即したアーキテクチャになっているか、テストされているか、といったところを見ています。

FTRはどういった流れで進めていくのですか?

FTRでは、ここまでお伝えしてきたような要件を項目にして用意しています。FTRの申請にあたり、AWSパートナー側から各項目に対してどのように対応しているのかがわかる説明やアーキテクチャ図などを提出してもらいます。

これらの資料から、一つひとつの項目がAWSのベストプラクティスに即した対応になっているかをチェックした上で、対面のレビューを実施し、双方の理解を確認します。レビューを通じて明確に要件を満たせていない項目や改善が必要な事項は、持ち帰っていただき、6 か月以内に課題が解消されてすべての項目がクリアされればFTR通過となります。

Sky株式会社は、AWSパートナーとして、AWSに関する多くのノウハウと知識を有する企業です。FTRにおいても、蓄積されたノウハウを生かして、スムーズに進めていただけたと感じています。

FTRの今後の展望についてお聞かせください。

繰り返しになりますが、FTRで確認する項目は、AWSのベストプラクティスに基づいて作られています。このベストプラクティスは、AWSに新しいサービスが増えたり、AWSを活用するお客様によってサービスが新たな使われ方をされたりすることによって、アップデートを繰り返しています。そして、そのアップデートに伴って、FTRの要件も変化し続けているのです。

AWSの新たなサービスの90%以上はお客様からのご要望によって生み出されています。こうしたことからも、われわれはベストプラクティスを、AWSとお客様やAWSパートナーが共に作り上げているものだと考えています。これからも時代の変化や皆さまのニーズに合わせて、新たなサービスを提供していきます。そしてそれに合わせて、ベストプラクティスやFTRの要件はさらにアップデートされていくでしょう。

このような変化に対応するため、FTRは3年という有効期限を設けており、定期的に弊社のレビューを受けていただくことになっています。さらに、継続的にAWSパートナーの自社内でベストプラクティスに関するレビューを実施いただくことも要件に組み込まれています。

開発したソリューションは一度提供して終わりではなく、エンドユーザーのニーズを満たしていくために進化していかなければなりません。その進化をAWSのサービスによってサポートしていきたいと思います。そして今後も、エンドユーザーの皆さまが安心して利用できるソリューションとなるよう、AWSを活用いただくAWSパートナーに目指していただくベースラインとして、FTRを機能させていきたいと考えています。

(「SKYPCE NEWS vol.17」 2025年4月掲載 / 2024年12月取材)