政府が5年で1兆円を投じる方針を発表したことで話題のリスキリング。 皆さまはどのくらいご存じですか? 取り組まなければ未来がないともいわれるリスキリングについて、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行われている後藤 宗明 氏にお話を伺いました。
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事
SkyHive Technologies 日本代表
後藤 宗明 氏
2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。
2022年、AIを利用してスキル可視化を可能にするリスキリングプラットフォームSkyHive Technologiesの日本代表に就任。
石川県加賀市「デジタルカレッジKAGA」理事、広島県「リスキリング推進検討協議会/分科会」委員、経済産業省「スキル標準化調査委員会」委員、リクルートワークス研究所 客員研究員を歴任。政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。
著書に『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』(日本能率協会マネジメントセンター)。
「リスキリング」については「学び直し」以上のことを知らない人が多いと思いますので、あらためて解説をお願いします。
後藤氏
日本では「リスキリング=学び直し」と考えている方が多いのですが、個人が自分の好きなことを学び直すのはリスキリングではありません。DX等の変革が求められる組織のニーズに基づいて、企業・組織が従業員に新しいスキルを身につけさせるのがリスキリングです。リスキル(reskill)は、直訳すると「新しいスキルを再習得させる」という意味で、再習得「させる」他動詞の主語は組織、目的語が従業員になります。この理解はすでに欧米では進んでいますが、日本の皆さんに対してはさらにかみ砕いて「実施する責任を企業・組織が持つ」ことがリスキリングだと説明しています。
リスキリングが注目されたのは、2013年に発表されたオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン教授の論文「雇用の未来」の中で、デジタル化によって今後10~20年以内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクがあると発表したことがきっかけです。現時点で実際に論文どおりになっているわけではありませんが、保険の審査担当者や銀行の融資などに従事する人の数は減っていますし、今後オフィス事務やサポート業務のほとんどが人間からAIに変わっていくことは間違いないと思われます。そこで、欧米ではITやAIに仕事を奪われる技術的失業の影響を受ける前に新しいスキルを身につけ、新しく生まれる仕事に労働移動する手段としてリスキリングが取り入れられるようになりました。
「技術的失業」が起こる理由について教えてください。
後藤氏
理由はさまざまですが、一番はスキルギャップだといわれています。デジタル分野には新たな仕事がどんどん増えていますが、その一方で単純作業の自動化により仕事を失う人も。残念ながら、この人たちが、今後さらに増加していくデジタル分野の仕事に就くためにはスキルが足りません。このような技術的失業を防ぐためには、成長産業に労働者を移す必要があります。この問題を解決する最も有効な手段がリスキリングです。
日本では、DX(デジタルトランスフォーメーション)人材が足りない、だからリスキリングしなければならないと捉えられている企業が多いのですが、それだけでなく新型コロナウイルス感染症の影響もありました。訪問型の営業活動を縮小せざるを得なかった企業が、インサイドセールスのために取り入れるパターンです。テック企業にとってはすでに当たり前のインサイドセールスですが、昔からの伝統が脈々と受け継がれデジタルを取り入れた営業活動をしてこなかった企業にとって、リスキリングはインサイドセールスを取り入れるための手段でもあります。
リスキリングを紹介する記事でよく比較されているのが「リカレント」です。しかし、リカレントという言葉になじみのない人も多いと思います。
後藤氏
日本ではなじみが薄いリカレントですが、イギリスの組織論学者リンダ・グラットン教授がベストセラー『ワーク・シフト』『ライフ・シフト』の中で、人生100年時代に突入した長い人生では学び直すことが大事だと提唱して注目されました。リカレントの原点は個人の関心ですから、現在就いている職業と直結させる必要はなく、学ぶのは歴史でも政治でも何でも構いません。リカレントには反復という意味があり、一度仕事を辞めて大学院で学び直した後、また新たに学んだ分野の仕事に就くという行動を繰り返します。リスキリングとは違い、学費は個人負担です。
リスキリングは、
企業・組織が責任を持って実施するもの
リカレントのように、リスキリングを従業員の自主性に任せようとする企業もありそうな気がします。
後藤氏
個人の自主性に任せてリスキリングが浸透するなら、日本はとっくにデジタル大国です。欧米でリスキリングが進んでいるのは、会社や組織が主導しているだけでなく、政府・自治体の責任で取り組んでいる影響が大きいと思います。その結果を表しているのが、デジタル競争力ランキングでの日本と欧米の差です。日本政府は、個人が主体的に学んでくれることに期待していたのかもしれませんが、それではデジタルに関心のある一部の人以外には浸透しません。自主性に任せていたら、いつまでたっても請求書の電子化は進みませんし、効率的な仕事のやりとりのためのチャット利用も浸透しないでしょう。
企業の規模を問わず新たにデジタル活用を先導する事業部を作るなど仕事のやり方を変えて生産性を高める努力をしなければ、事業が縮小していくのを避けられません。誰が主導するのか理解されていないことが、リスキリングへの誤解を生んでいるのではないかと感じます。
リスキリングの浸透には欧米のように国が主導することも必要。だから日本でも5年で1兆円も投じるという首相の発言が出たわけですね。
後藤氏
2022年10月3日に招集された臨時国会の所信表明演説で、岸田首相が新しい資本主義のメイン施策として突然リスキリングについて触れました。多くの方は「リスキリングって何?」と思われたと思います。Twitterでは「リスキリングとか言い出したけど、リスを殺すのか?」なんてことが本当につぶやかれていたくらいです(笑)。この数年、日経新聞や各種ビジネスメディアなどでリスキリングが頻繁に取り上げられていたため20%強の認知率はありますが、それらのメディアに触れる機会が少ない若い世代ほど、知らない傾向にあります。
リスキリングに取り組む必要があるのは、非デジタル人材だけですか?
後藤氏
これは「イエス」であり「ノー」でもあります。そもそもリスキリングは、新しいスキルを身につけるという意味なので、それが必ずしもデジタルである必要はありません。しかし、リスキリングの根幹は新たに成長していく分野のスキルを身につけることです。そのため、今後自動化されていくとわかっている職種の場合、仕事の知識を習得するだけでなくさらなる目的を持つことが求められます。例えば、会計士の業務が自動化されていくことは広く知られていますから、仕事について学ぶだけでは単なるスキルの習得です。会計士の仕事をリスキリングに結びつけるなら、新たな会計ソフトウェアを作るなど結果的にデジタル分野のスキルが身につく「+αの目的」を持つことが必要です。
20世紀にも農業から工業中心の社会へ産業構造の変化が起こりましたが、工業から情報集約型の社会へ移行している今、圧倒的に足りていないのがデジタル人材です。当然、企業・組織はデジタル人材を求めていますから、給料が上がらないと言われ続けている日本でさえ、この分野の年収はここ数年で30%もアップしています。これからデジタル人材を目指すということであれば、非デジタル人材が取り組むのがリスキリングといえるのかもしれません。デジタル分野の知識の習得がリスキリングだというのが世界の共通認識ですが、今後、デジタル人材以外の人材が大量に必要とされる新たな産業が発生し成長していくのであれば、その分野についてのスキル習得もリスキリングしていくことになります。
私は40歳でリスキリングを始めましたが、それからの10年間は厳しい挑戦の日々に将来への不安を感じることが何度もありました。しかし、AIのプラクティスを何度も続けるリスキリングを繰り返した結果、50歳を過ぎた今ではリスキリングを専門に扱っているAIプラットフォーム企業の日本法人代表に就任しています。それでも、リスキリングを止めれば、待っているのは厳しい現実です。ただ、自分の市場価値をキープするために必要なのはリスキリングを続けることだとわかっていますので、次に何についてリスキリングするべきかを考え実践しています。
今の日本に必要なのは、
チャレンジ精神
チャレンジ精神
GDPの順位を20年で26位も落とし、このままでは日本の発展途上国入りは避けられないと言われていますが、 このような状況に陥った原因は何だとお考えですか?
後藤氏
日本経済は発展途上国の仲間入り目前の危険水域を漂っていますが、デジタル後進国であることは間違いありません。毎年順位を落とし続けている世界デジタル競争力ランキングでは、対象の63カ国・地域の中で2022年はついに29位まで陥落。アジアパシフィック地域14カ国でも9位です。私たちは、先進国といわれていた日本が、今や下から数えた方が早い位置にいる現実を直視しなければなりません。
海外で優秀だと定義されているのは、新しいものを作り出せる人、新たな価値を生む「ゼロイチ」力を持っている人です。人口が4,000万人と自国だけではマーケットが狭い韓国では、早くから海外を視野に入れた挑戦を続けています。中途半端に1.2億人のマーケットを持っていた日本は、その環境に甘んじて挑戦しなかった結果、今あるものを正確に再現できる人や、上の指示を忠実にやり遂げる人が優秀なビジネスパーソンとして認定される社会になりました。今の日本に必要なのは、チャレンジ精神です。1980年代に日本経済が「Japan as No.1」と称賛された古き良き時代の考え方や習慣を捨てて挑戦者にならなければ、日本の終わりが始まってしまう危機感を持っています。
日本が終わらないために必要とされるリスキリングですが、機会を提供する責任のある企業・組織がまずやるべきことは何でしょうか?
後藤氏
経営者自身がリスキリングすることです。これは、企業の規模にかかわらず共通しています。デジタルを使って何ができるのか、競合企業の取り組みも含めて、経営者が正確に理解することが必要です。私は地方の企業・組織のリスキリング立ち上げ支援も行っていますが、残念ながら経営者の方々の多くは、デジタルを取り入れることで自分たちの事業に対して何ができるのか、何が変えられるのかをご存じない場合が多い傾向にあります。その状況で「DXしろ、AIを使え」と指示を出されても、現場の担当者は何をしたらいいのかわからず、ひとまずベンダーさんを頼ることになります。しかし、ベンダーさんと相談したDXを経営者に提案しても、デジタルを理解できていない経営者には投資すべきかの意思決定ができず、結局何も変えられません。
今の時代、試験的な取り組みであっても、試行錯誤しながら新たなサービスや事業を立ち上げることが重要です。Skyさんは、元は受託開発だけだった事業にパッケージ事業を追加され売り上げも順調なのに、「SKYPCE」のようなオウンドサービスを立ち上げられた。これは将来を見据えたチャレンジで、DXを成功させるために必要な経営感覚だと思います。
この先人口がどんどん減っていくなかで、海外から格安のサービスが次々に入ってきますので、現状のままで変わろうとしない企業に残された未来は、事業規模の縮小です。人間が年齢を重ねて自然に亡くなることを老衰といいますが、変わらない日本企業が向かう先はまさに老衰だと考えています。
変わらない企業で働いている人は、会社と一緒に自分も老衰へまっしぐらということでしょうか。
後藤氏
その事実に気づく年齢によって、その後の人生が大きく変わります。40歳や50歳でもその事実に気づいて抜け出すことができれば、60歳時点の人生は気づかなかった場合に比べ確実に良い方向に向かっているはずです。残念ながら70歳で気づいても、多くの場合は時すでに遅しだと思います。
ただ、今すぐ会社を抜け出して転職できるチャンスが誰にでもあるわけではありませんから、まずは今の会社の経営者にリスキリングでデジタルリテラシーを上げてもらい、DXを成功に導くことが老衰に向かわないための第一ステップです。ここが完全に抜け落ちていれば、従業員からのボトムアップでリスキリングしてもうまくいきません。経営者自らリスキリングして、自社業務の何をデジタル化すれば利益につながるのかを見極められます。従業員に対してリスキリングを促す内容が明確になるのはその後です。
変経営者のリスキリングに期待できない企業の従業員はどうしたらいいでしょうか。
後藤氏
1つは「このままではマズイ」と感じている従業員が、経営者に対してリスキリングの環境を用意してくれるよう提言することです。自社の利益のために、デジタルを使って何ができるのかを真剣に議論する全社横断のプロジェクトを立ち上げ、出てきた内容に応じたオンライン講座受講のための予算を要求する。これで動いてくれる会社であれば残る価値がありますが、もしも「そんな余計なことはしなくていい」と言われたら、残る価値はないと考えるべきでしょう。
私は著書の中で、市場価値の高いデジタルスキルをある程度身につけられたら、いつでもFA(フリーエージェント)宣言できると書きました。FA宣言できるだけの価値を身につければ、600万円の年収が1,000万円になる可能性もあります。今現在の職場のリスキリング環境を問わず、安心して80代を迎えるためにもぜひリスキリングに取り組んでください。
一番大切なのは
「自分自身をリスキリングさせるスキル」
「自分
老衰に向かっている会社だとわかっていても、ある程度の年齢を超えると辞めるに辞められない方もいらっしゃるように思います。
後藤氏
これは人によると思います。50歳の今、私にはAI分野の求人情報が数多く届きます。この分野のスキルを持っている人が少ないこともありますが、大事なのは「リスキリングで得たスキル×自分のスキル」です。私の場合、営業・事業開発・人事の3つを掛けられるのが強みで、皆さんも「今までやってきたこと×デジタル」を強みにすれば、ある程度の年齢を超えても役立つと思います。デジタル分野は、とにかく人が足りていませんから、誰にでもチャンスはあります。
残念ながら私たち以降の世代には、60代で定年を迎えて引退し、縁側でお茶を飲む生活は訪れないでしょう。人生100年時代、もらえる年金額は間違いなく下がりますし、80歳までは健康年齢を考慮しても現役で働かざるを得ないと思います。これはかなり現実的な話です。私は22歳から仕事を始めて28年たちますが、80歳まで働くなら今はまだ折り返し地点。だから「もう50歳だから新しいスキルなんて身につけられない」と言っている場合ではありません。家賃収入などの不労所得があればリスキリングの必要はないかもしれませんが、日本ではそのような人は人口の数%程度ではないでしょうか。それに該当しない方々は働き続けなければなりませんから、筋トレするくらいの気持ちでリスキリングに取り組んでいただけたらと思います。リスキリングに一番大切なのは「自分自身をリスキリングさせるスキル」です。
若い世代が今のうちに取り組んでおくべきことは何ですか?
後藤氏
20代の従業員に必要なのは、単純に新しいスキルを身につける「スキリング」です。その昔、音楽を聴くのはCDでしたが、今ではデジタル配信が主流になっているように、22歳で仕事を始めた人が32歳になったとき、それまでに身につけたスキルは要らなくなっているかもしれません。若い方には新しいスキルをどんどん身につけて、将来のFA宣言に向けて、やってきたこと=スキルを増やしてください。
それでもリスキリングなんてやりたくない、ただ淡々と仕事をこなしてお給料をもらえたらと考える人もいると思います。
後藤氏
一般的な事務業務はAIやRPA(Robotic Process Automation)に取って代わられるため、デジタルスキルを持たない事務職の方の多くは職を失います。一方、Amazon Goのようなすべてが自動化された店舗でも、お客様からの質問対応を行っているのは人間です。このような人間でなければできない仕事は残ります。しかし、デジタルスキルが求められない仕事は限定されるため、その仕事に就ける人はわずかです。デジタルスキルを身につけなければ自分の市場価値はどんどん下がっていきますから、収入も上がらないまま人員整理の対象にもなりかねません。働き続けたい、収入を上げたい人にとって、リスキリングしない選択肢はないということです。
また、テック系のスタートアップ企業では営業職の従業員が少なく、自分たちから売り込むアウトバウンドのリソースを大企業向けのハイタッチセールスに集中させています。そのため、中小企業に対しては販売会社や顧客からの問い合わせを受けるインバウンドセールスが中心です。特にこの傾向が顕著なアメリカのスタートアップ企業では、ハイタッチセールスができる営業が求められます。今後、日本でもコミュニケーション能力の高さと、ハイタッチセールスでコミットメントできる優秀な営業職が求められ、中途半端な訪問営業は必要とされなくなっていくでしょう。
日本でも営業のオンライン化が進んでいますが、技術が進化していけば、申し込みの自動化はもちろん、導入支援のすべてがチャットボットで対応できるなど、営業の自動化は今後さらに進んでいくのは間違いありません。
収入を上げる近道は、
市場で求められるスキルの獲得
市場で
営業職の方は、リスキリングによって何を得るべきでしょうか。
後藤氏
営業職にとってリスキリングの大前提は、顧客を成功に導く「カスタマーサクセス」に必要なスキルを身につけることです。例えばSkyさんの営業職の方であれば、「SKYPCE」を使ってお客様に何をもたらすことができるのか、「アイデアを考えて提供できること」になります。「名刺情報をデジタル化できます」だけでは、デジタルに詳しくない企業には売れるかもしれませんが、デジタル化のその先にあるメリットをお伝えできなければデジタル化が進んでいる企業には刺さりません。DXが進んでいけば、商品の機能を紹介するだけの営業は必要とされなくなります。
私がお客様にAIのプラットフォームについて説明する際、そのお客様のAI導入履歴だけでなく、これまでのデジタル化で何をしてこられたのかを調べます。今回のAI導入は何を目的としているのか、打ち合わせに臨む前にある程度の仮説を立てておくことで、早い段階から「カスタマーサクセス」の方向性が見えて、お客様の事業を成功に導く提案につながります。デジタル化時代の営業職に求められるのは、商品説明力ではありません。
そして、営業職の方が絶対に身につけるべきなのが、デジタルマーケティング分野の知識です。すでにデジタルマーケティングのリードから営業が始まることもめずらしくなく、その分野のスキルを持っていれば、できる仕事の範囲が広がります。かなり専門的な知識が求められますから、デジタルマーケターとデジタルマーケティングをわかっていない営業職では会話がかみ合いません。
個性を武器にした提案で活躍されている営業職の方は、今後も必要とされるように思います。
後藤氏
そういう特別な人は必要とされ残っていくと思います。例えば普段は回転寿司でも、お祝い事など特別な日には、普段より高級なお店に行くこともありますよね。高級なお店には、人間にしかできないおもてなしや職人さんの技を求める人が多いはずですから、特別な提案ができる営業は今後も必要とされていくでしょう。
また、高級ブランドの洋服を買う顧客は、製品の品質だけでなく店員からの最高の接客を期待しています。一方、セルフレジが導入されているファストファッションのお店に求めているのは値段と品質で、最高の接客ではありません。営業職に求められるスキルにも、顧客の要求の違いでこのような差異が生まれてくるような気がします。
最後にメッセージをお願いします。
後藤氏
今、物価は上がっているのに給与が上がらないことが問題になっていますが、市場で求められる分野のスキルを身につければわかりやすく収入が上がり、将来の選択肢も増えます。今はとにかくデジタルですが、次に来るのは気候変動や脱炭素化に向けた「グリーン・スキル」です。すでに欧米では労働者に「グリーン・リスキリング」が求められるようになっています。さらに10年後には宇宙で使える製品を作る能力「スペース・スキル」が求められるようになるでしょう。今後、人間が宇宙に住む時代が来れば、すべての製品やサービスが宇宙で使えることを前提に作られますから、宇宙に関する知識が求められ「スペース・リスキリング」を行っていくことになるわけです。私もこれからの10年は「グリーン・リスキリング」をやると決めていて、その後は「スペース・リスキリング」をしようと考えています。
「Never-Ending Journey(終わらない旅)」といわれるリスキリングには、終わりがありません。将来の選択肢を増やし、明るい未来を作っていくためにリスキリングに取り組むか、「めんどくさい」「学びたくない」と思うかで人生は大きく変わります。社会人として楽しい生活を送れるかは「自分自身をリスキリングする」スキルをどれだけ早いタイミングで身につけられるかにかかっています。早ければ早いほど将来の選択肢は広がりますから、嫌がらずに前向きに取り組んでいただけたらと思います。
(「SKYPCE NEWS vol.5」 2023年1月掲載)