企業が中長期的に成長していく上で重要なのが営業戦略です。変化が激しく、将来を見通すことが難しい現代のビジネスで成功するためには、しっかりとした営業戦略を立案する必要があります。では、営業戦略はどのように立てればいいのでしょうか。効果的な戦略立案のためには、いくつもの重要なポイントがあります。 本記事では、営業戦略とは何かといった概要や営業戦術との違いのほか、具体的な戦略立案のための分析方法やフレームワークについても解説します。
営業戦略とは、企業が利益拡大を達成するための中長期的な計画・方針のこと
営業戦略とは、企業が売り上げや利益といった目標を達成するための中長期的な指針のことです。営業戦略は、変化するマーケットや競合状況、もしくは顧客のニーズに合わせて、企業が将来も持続的に成長を続けていくために欠かせないものといえます。
例えば、企業が今後5年間で営業利益を30%増やすという目標を定めた場合、「営業利益30%成長」という目標を達成するための方針が営業戦略です。この目標を達成するための戦略としては、「利益率を上げるために高付加価値の製品やサービスの企画開発・販売に注力する」「未開拓エリアに出店し、利益の元になる売り上げを拡大する」といったものが考えられます。
営業戦略と営業戦術との違い
営業戦術とは、営業戦略を実施するための具体的な方法のことをいいます。前述の例でいえば、高付加価値の製品やサービスの企画開発・販売に注力するためには、企画開発力を上げるとともに、マーケティングや販促活動などの戦術立案が必要です。また、未開拓エリアで販路拡大を目指すという戦略を実践するためには、その土地の特性を踏まえた出店や人員の採用、販売計画を立てることなどが考えられます。
このように、中長期的な視点で大局的に考える営業戦略に対して、営業戦術は営業戦略を達成するために、短期的な視点で考えて進めていきます。ここで注意すべきなのは、営業戦術は営業戦略が決まってから考えるということです。戦略が決まっていない状態で戦術を考えても、その場の思いつきで終わってしまう可能性があります。必ず「会社としての目標や経営計画」を決める部分から始めて、目標達成のための「営業戦略」、営業戦略を達成するための「営業戦術」を考えるという順序で取り組むことが大切です。
営業戦略の立て方
では、営業戦略は具体的にどのように立案すればいいのでしょうか。ここでは、戦略の立て方について、具体的な考え方や手順について解説します。
1. 中長期的な目標を具体的に設定する
まずは営業戦略を立てる前に、企業が目指すべき中長期的な目標を具体的に設定することが必要です。営業戦略ではこの目標に「KGI(経営目標達成指標)」という言葉がよく用いられます。前述の「営業利益30%成長」のほか「業界シェア50%獲得」「契約数2倍」などがこのKGIに当たり、定量的な数値目標を設定することが重要です。
ここで大切なのは、「いつまでに達成するかという期限を設けること」「実現できるレベルの数値目標にすること」の2点といえます。期限を明確にせず、現実味のない高すぎる数値にしてしまうと、営業戦略に具体性を持たせることができず、組織のモチベーション低下を招く恐れがあるため注意が必要です。
2. 現状の営業課題を特定する
中長期的な目標を設定したら、次に現状の営業課題を明確にしていきます。目標達成のボトルネックとなっている部分を洗い出し、把握することが、営業戦略の立案において極めて重要なポイントです。自社の強み・弱みを客観的に理解することができれば、より効果的な戦略設計に生かすことができます。
3. 顧客理解を深める
営業課題を把握し、次に取り組むべきは「顧客理解を深める」ことです。顧客理解とは、自社の製品・サービスの顧客がどのような属性で、どんなニーズを持っているのかを調査し、顧客の解像度を高める作業をいいます。顧客の理解を深めることは、営業戦略の立案に最も重要な要素といっても過言ではありません。ですから、次のような方法によって顧客理解を深めることで、営業戦略が立案しやすくなるでしょう。
ペルソナを設定し、顧客のニーズを明確にする
顧客理解を深めるための方法の一つに「ペルソナ」の設定があります。ペルソナとは、自社の製品・サービスにおける「典型的な顧客ターゲット像」のこと。ペルソナの設定は「30代・女性・会社員」のような漠然としたイメージではなく、「35歳・女性・IT企業の会社員で管理職・独身・年収500万円・都内の賃貸住宅で一人暮らし・趣味は旅行とゲーム」など、詳細に作り込むのがポイントとなります。詳細なペルソナを設定することで、顧客がどのような悩みを抱えていて、自社の製品・サービスに何を求めているのかを明確にすることができ、ユーザー視点に立った戦略立案が可能です。
カスタマージャーニーマップで顧客へのアプローチに生かす
顧客理解を深めるもう一つの方法は、「カスタマージャーニーマップ」の作成です。カスタマージャーニーマップとは、ペルソナが自社の製品やサービスを購入するまでの体験の流れを示したものをいいます。ペルソナが広告やSNS、口コミ、検索などを通じて製品やサービスの存在を知り、Webサイトで情報を収集し、他社製品と比較検討を経て購入に至るまでの流れを把握することで、どのタイミングでどのような施策を用いて顧客とコミュニケーションを取るべきか、明確にすることが可能です。
4. 内部環境・外部環境を分析する
内部環境とは、営業活動に使える自社のリソースのことを指します。また、外部環境とは市場規模や成長性、市場における自社のポジションなどのことです。これらをそれぞれ分析した上で、戦略設計を行うことが必要になります。
内部環境の分析
内部環境には、営業活動にかけられる人材リソースや予算、情報などがあります。仮に新規の顧客を開拓しようとしても、今いる営業メンバーが既存顧客の対応で手一杯であればどうしようもありません。また、海外進出を目指す場合、社内に海外の商慣習に関する情報がなければ、戦略は失敗に終わる可能性があります。このように、営業戦略を立案するためには、まず自社がどのようなリソースを持ち、実際にどの程度動かせるのかという内部環境について分析を進める必要があります。
外部環境の分析
外部環境とは市場の概況のことです。そもそも市場規模はどの程度の大きさなのか、自社は市場の中でどのようなポジションにあるのか、今後市場はどの程度拡大または縮小していくのか、競合他社はどういった動きをしているのかといった情報は、営業戦略を立てる上で非常に重要です。あまり成長が期待できない市場に対して、営業リソースの大部分を投下するのは現実的とはいえません。その場合は、なるべく少ないリソースで効率良く利益を上げるといった戦略が必要になります。
5. 行動計画を明確にする
営業戦略は、ただ立案するだけでは意味がありません。策定した営業戦略を達成するための具体的な施策を考え、実行する必要があります。その際に重要なのは、「誰がどのようなスケジュールで、どんな施策を実施するのか」を明確にしておくことです。ここが不明確なままだと、戦略を立てたはいいものの、誰も手をつけないまま時間だけが過ぎてしまうといったことにもなりかねません。
また、施策を実施したら、必ずその結果を評価することも大切です。その際、施策の目的や基準を決めておかないと、結局どうなれば成功なのかといった判断が曖昧になってしまうでしょう。数値目標を設けるなど、できるだけ明確に目標を定めることが肝心です。
営業戦略の進め方
では、営業戦略を進めるための営業戦術は、どのように立案していけばいいのでしょうか。ここからは、具体的な営業戦略の進め方について解説します。
1. 営業戦略を実行するための営業戦術を決める
営業戦略を進めるための営業戦術は、一つだけとは限りません。内部環境や外部環境によっても最適な戦術は変わってきます。まずはそうした数ある営業戦術の中から、自社が採るべき戦術を選択することが重要になります。
2. KPIの設定
戦術を実行する際、その進捗状況を常に確認しておくことが必要です。この進捗確認のための指標を「KPI(重要業績評価指標)」と呼びます。KPIを適切に設定できていないと、施策の成果を正しく評価することができない可能性があるので注意が必要です。KPIは戦術ごとに異なる指標を設定することが多いですが、必ずしも1つの戦術に対して1つの指標に絞らなくても構いません。戦術の一つひとつに複数のKPIを設定することで、多角的な視点で施策を評価することが可能になります。
3. KPIの進捗を可視化する
設定したKPIの進捗状況は可視化して、常にモニタリングできるようにしておくことが大切です。「なんとなくうまくいっているように見える」というように曖昧な主観で判断するのではなく、具体的な数値目標を定めて客観的なデータとして検証します。定期的な進捗確認をおろそかにしてしまうと、施策の問題点を把握しにくくなり、対処が遅れる原因になるため、きちんと確認しておくことが肝心です。
4. 効果を検証し、改善する
施策の効果がKPIを大きく下回るようなら、施策の方向性を修正するといった対策が必要です。変化が激しく短期的な将来予測すら難しい時代のため、どれだけ明確な根拠を持って施策を考え実行したとしても、思うような効果が出ないことは多々あります。そうした施策の効果をリアルタイムに検証し、素早い改善を重ねていくことが重要です。
営業戦略を策定するための分析方法とフレームワーク
営業戦略を策定するために内部環境・外部環境の分析が重要になることは、前述のとおりです。ここでは、営業戦略を設計するための具体的な分析方法とフレームワークをご紹介します。
3C分析
3C分析とは、「顧客・市場(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」という3つの「C」について分析し、自社の戦略設計に生かすための手法です。顧客のニーズ、競合の状況、自社の強みや弱みといった要素を分析して、市場の現状と自社の立ち位置を容易に把握できることが3C分析のメリットといえます。
MECE
MECEとは、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字を取った言葉で、「ミーシー」または「ミッシー」と読みます。「抜け漏れなく、重複しない」ことを意味するロジカルシンキングの基本的な考え方としても用いられ、情報を網羅的かつ論理的に整理できるフレームワークです。営業戦略を立てる上では、顧客や市場データなどの抜け漏れや重複を排除することで、重要な部分にフォーカスして効果的な戦略設計に生かすことができます。
SWOT分析
SWOT分析とは、自社の「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの要素をマトリクスにして、自社や市場の分析を行う手法のことをいいます。ここで重要なのは、それぞれの項目を単独で考えるだけでなく、掛け合わせて考えることです。例えば、「強み」と「脅威」を掛け合わせれば、「自社の強みを生かして、競合他社の新規参入という脅威にどう立ち向かうか」といった考え方が生まれます。仮に自社の強みが「業界の中でも特にITに強いこと」なのであれば、「製品やサービスとITを掛け合わせて独自性を出していく」といった戦略を立てることが可能です。
ランチェスター戦略
ランチェスター戦略とは、主に中小企業が大企業との競合に対抗するための戦略です。資金力や人的リソースに勝る大企業と同じような戦略で戦っても、中小企業はなかなか勝つことができません。そこで、まずは自社が得意とする小さなフィールドにリソースを注ぎ、その領域でナンバーワン企業になることを目指します。ランチェスター戦略は、自社の限られたリソースを有効に活用し、戦略的に市場競争力を高めることが可能な手法です。
パレートの法則
パレートの法則は「80:20の法則」とも呼ばれ、ビジネスシーン以外でもよく知られた法則です。この法則は「売り上げの8割は2割の顧客から生まれる」または「2割の商品による売り上げが全体の8割を占める」といった考え方で、仮に自社製品がパレートの法則に当てはまっていれば、売り上げの8割を占める2割のロイヤルカスタマーにリソースを投下することで、効率良く利益を上げられる可能性があることを意味します。ただし、自社の製品やサービスがパレートの法則に当てはまっていない場合は、誤った営業戦略になってしまう恐れもあるため、社内のデータを慎重に見極める必要があります。
営業戦略を成功させるためのポイント
ここまで、営業戦略を立てる具体的な流れや分析手法などについて紹介してきました。続いては、営業戦略の立案および実行時に起きる可能性のある課題と、その解決策について解説します。
情報収集とその一元管理
営業戦略を成功させるためのポイントの一つが、顧客情報などの情報収集と情報の一元管理です。営業戦略立案のためには、市場動向、競合の状況、顧客ニーズなど、多くの情報を収集して分析する必要がありますが、情報が社内に散在していると、効率的な戦略立案ができない可能性があります。
顧客に関する情報を集約するためのツールとして活用したいのが名刺管理サービスです。名刺管理サービスは紙の名刺情報をデータ化し、顧客情報を一元管理することができます。顧客から得た名刺を素早く集約することで、具体的に案件化する前段階から顧客に関する情報を可視化し、チーム内で共有できます。また、企業ごとや案件ごとに情報管理する営業支援ツールと異なり、人にフォーカスを当てて情報管理できることも特長です。
営業チーム内でのコミュニケーション戦略
営業戦略を成功に導くために必要なのは、営業チーム全体の理解と協力です。しかし、新しい戦略を導入したことによる変化に抵抗を示すメンバーがいる場合もあります。営業戦略を成功させるには、営業チーム内でのコミュニケーションが非常に重要です。
情報の透明性と共有
営業チームのメンバーから理解を得るために大切なのが、情報の透明性です。チーム内の情報は余すところなく共有し、情報レベルを統一する必要があります。チーム内のメンバー間で情報レベルに差があると、戦略の実行もうまくいきません。顧客や市場の情報は常にメンバー全員で共有できる状況をつくることが重要です。そのためにも、チーム内で定期的にミーティングを行って、情報を共有することをお勧めします。
適切なフィードバック
営業チームのスキルアップやモチベーション向上のために欠かせないのがフィードバックです。フィードバックにはさまざまな効果が期待できます。例えば、活躍したメンバーの行動をたたえることでモチベーションを向上させることができ、コミュニケーションの機会が増えることでチーム内の信頼関係を構築することも可能です。フィードバックを通してスキルアップを促すことで、将来のリーダー候補などの人材育成も期待できます。
営業支援 名刺管理サービス「SKYPCE」で営業戦略を強化
企業が営業戦略を立案・実行するためには、自社の課題や市場動向、競合状況などをきちんと把握し、適切に分析することが必要になります。その中でも最も大事なのは、顧客の情報をより細かく収集し・一元管理して共有し、チームとして顧客理解を深めることです。
Sky株式会社が提供する「SKYPCE」は、顧客と交換した名刺をスキャナーやスマートフォンアプリで読み込んでデータ化し、組織内で一元管理することができる名刺管理サービスです。「SKYPCE」には、商談時に顧客と話した内容や日々の営業活動を名刺データに紐づけて記録できる機能のほか、顧客の組織図を自動生成する機能、顧客企業に関する最新ニュースを閲覧できる機能など、顧客企業を取り巻く環境やニーズなどをより深く理解し、効果的な営業戦略を立てるために役立つ機能が用意されています。
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